中医協総会 次期診療報酬改定でICT、AIを検討 地域包括ケア構築と医療の効率化が焦点
公開日時 2016/12/22 03:51
厚生労働省は12月21日、中医協総会に提示した次期診療報酬改定の検討項目に、ICT、AI(人工知能)など「次世代の医療を担うサービスイノベーション推進」を盛り込んだ。遠隔医療などICTやAIの導入を前提とした診療報酬体系の整備は、政府の未来投資会議でも必要性が指摘されており、国をあげての議論が進んできた。医療ICTを活用した情報の共有化は、地域包括ケアシステム構築にも必須。2025年の超高齢化社会に対応する医療提供体制構築に向けて重要なマイルストーンとなる2018年度診療報酬・介護報酬同改定でも、地域包括ケアシステムの構築と医療の効率化が柱となるが、それを実現するためのツールとなる医療ICTの保険上の評価なども議論される。年明けにも、本格的な議論がスタートする。
次期改定に向けた主な検討項目は、①医療機能の分化・連携の強化、地域包括ケアシステムの構築の推進、②アウトカムに基づく評価など、患者の価値中心の安心・安全で質の高い医療の実現、③緩和ケアを含むがん患者、認知症患者への質の高い医療、薬剤使用の適正化による薬剤管理業務など、④持続可能性を高める効果的・効率的な医療への対応――が柱となっている。
◎医療の効率化へ 薬価制度抜本改革、費用対効果評価、GEの推進も
高齢化に伴って、社会保障費が膨らむ中で、医療の効率化は避けて通れない課題となっている。「持続可能性を高める効果的・効率的な医療への対応」を柱に据え、①医薬品、医療機器等の適切な評価、②次世代の医療を担うサービスイノベーションの推進――をあげた。医薬品、医療機器等の適切な評価では、抗がん剤・オプジーボに端を発して議論となった薬価制度の抜本改革に加え、▽医療技術の費用対効果の観点を踏まえた評価、▽新しい医療技術の保険適用、▽後発医薬品のさらなる使用促進――を盛り込んだ。
そのほか、医療機能の分化・連携では、2016年度診療報酬改定で新設された“かかりつけ薬剤師・薬局”とかかりつけ医機能の連携や、療養病床・施設系サービスでの医療など、“医療と介護の連携”などを盛り込んだ。また、外来医療では、「生活習慣病治療薬等の処方」も項目として明記された。生活習慣病治療薬の処方については、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2016でも必要性が明記されており、ガイドラインや経済性を踏まえて、薬剤の採用基準や推奨度を明確化した薬剤のリスト“フォーミュラリ”などの導入も検討されている。
全日本病院協会の猪口雄二副会長は、医療の高度化などで診療報酬が複雑化していると指摘。医療機関の負担軽減の観点から、診療報酬の簡素化に加え、「ICTを入れながら作業の簡素化を図る」ことを求めた。また、個々の医療機関の創意工夫による医療の質向上の評価することも提案した。
◎薬価専門部会 支払側・幸野委員 薬価調査の対象、DPC点数などに問題意識
中医協薬価専門部会も同日開かれ、「薬価制度抜本改革の基本方針」(本紙既報、記事はこちら)が報告された。基本方針では、大手事業者等による全品を対象とした薬価調査を行い、「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」ことが盛り込まれた。
支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、薬価調査の対象が“大手事業者等”とされていることについて、四大卸だけでは全体の75%であることから、「実勢価格を把握できるのかは押さえておきたい」と述べ、大手卸と中小卸で実勢価格に差がないか、明確にする必要性を指摘した。また、DPC点数など薬剤を包括評価している診療報酬項目の取り扱いや、薬価だけでなく医療材料を検討する必要性などを指摘した。
診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、新薬創出・適応外薬解消等促進加算などに言及。新薬創出加算は、基本方針に「ゼロベースで抜本的に見直す」と明記された一方、費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを考慮することも盛り込まれている。中川委員は、「オプジーボの問題も、国民皆保険を守るために行ってきたが、成長戦略の一環である製薬産業に財源を充てるという風に見える」などと述べ、財源確保の難しさが想定される2018年度改定に向け、危機感を示した。