【速報】政府・薬価改革の基本方針案 全品対象に薬価調査、乖離率の大きな品目の毎年改定実施へ
公開日時 2016/12/16 18:36
政府の「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」の原案が12月16日、明らかになった。原案によると、全品を対象に薬価の毎年調査を行い、それに基づいた薬価改定を行う。通常の2年に1回の薬価調査に加え、狭間の年には「大手事業者を対象とした調査」を行う。また、抗がん剤・オプジーボに代表されるような、効能追加等で一定規模以上の市場拡大をした製品については、「新薬収載の機会を最大限活用して、年4回見直す」ことも盛り込んだ。さらに新薬創出・適応外薬解消等促進加算を“ゼロベースで抜本的に見直す”と明記。費用対効果評価の導入により、真に有効な医薬品に対してイノベーションを評価する方針を示した。塩崎厚労相、麻生財務相、菅官房長官、石原経済・財政相の4大臣会合を経て正式に承認する。
抗がん剤・オプジーボが社会保障費を圧迫するとの指摘に端を発した高額薬剤問題。抗がん剤・オプジーボの薬価50%引下げだけでは議論はとどまらず、薬価の抜本改革にまで議論は波及してきた。菅官房長官は11月25日の経済財政諮問会議で、「適応拡大の際の価格の見直しは必須。毎年の価格調査と改定が必要だ。鉄は熱いうちに打て」と述べるなど、官邸主導のトップダウンで改革を断行する方針が打ち出され、その後の中医協での業界ヒアリングなどを経て、原案の最終調整に至った。
原案では、現行の薬価制度が「革新的かつ非常に高額な医薬品」に対して柔軟に対応できていないと指摘。「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」両立の観点から、国民負担の軽減、医療の質向上実現の観点から改革を実施するとした。
◎薬価調査は四大卸など“大手事業者”に対象範囲を絞る
焦点となった薬価の毎年改定については、国民負担抑制の観点から市場実勢価格を把握することの必要性を指摘。全品を対象とした薬価調査の実施を求めた。医薬品卸や保険薬局、医療機関側の負担を懸念する声もあがっていたが、四大卸など“大手事業者”に対象範囲を絞ることで、薬価調査の負担が大きい個店の保険薬局などの負担増大に配慮した。ただ、薬価調査については、調査結果の正確性や調査手法を検証することの必要性も指摘。「薬価調査自体の見直しを検討し、来年中に結論を得る」ことも盛り込んだ。
また、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用することで、効能追加等に伴う一定規模以上の市場規模拡大した製品を洗い出し、新薬収載の機会を活用して年4回薬価の引下げを行うとした。
◎費用対効果評価導入で“真に有効な医薬品を評価”
医薬品産業は安倍政権が成長産業の一つに位置付けており、産業振興からイノベーション推進の必要性も議論されてきた。原案では、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度についても「ゼロベースで抜本的に見直す」とした一方で、「費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め費用対効果評価を本格的導入すること等により、真に有効な医薬品を適切に見極めてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図る」と明記した。
薬価制度改革が推し進めるのは、製薬ビジネスモデルの大転換にほかならない。原案でも、先発メーカーには、長期収載品に依存したビジネスモデルから脱却し、「より高い創薬力を持つ産業構造に転換する」ことの必要性を指摘。革新的バイオ医薬品、バイオシミラーの研究開発支援方策の拡充、ベンチャー企業への支援の必要性を盛り込んだ。一方で、後発医薬品企業には「市場での競争促進を検討し、結論を得る」と明記した。
毎年薬価改定の実施は、後発医薬品80%目標で厳しい経営を迫られる医薬品卸にも重くのしかかることが予測される。医薬品流通については、経営実態に配慮しつつ、「流通の効率化」を進めるとともに、「流通改善の推進、市場環境に伴う収益構造への適切な対処」を進めるとした。あわせて、単品単価契約の推進、早期妥結の促進に効果的な施策の実施も求めた。
そのほか、①薬価算定方式の正確性・透明性の徹底、外国価格調整の改善、②経営実態についても機動的に把握し、必要に応じて対応・検討、③評価の確立した新たな医療技術について、費用対効果を踏まえた国民への迅速な提供の方策――も盛り込んだ。