横浜市大・小阪名誉教授 レビー小体型認知症の「誤診多い」 特有の症状に注目を
公開日時 2014/10/09 03:52
横浜市立大学名誉教授の小阪憲司氏は、アリセプト(一般名:ドネペジル塩酸塩)がレビー小体型認知症の適応を取得したことを受けてエーザイが開催した会見で講演し、「レビー小体型認知症では早期に認知症が目立たず、幻視やパーキンソン症状など特有の症状で誤診されていることが多い」と問題提起した。この疾患を発見し、アリセプトの同適応症での開発にもかかわった小阪氏は、今回の承認を機に非専門医にも理解を進め、早期診断・治療を普及させていく必要性を訴えた。
レビー小体型認知症では、脳の神経細胞の中に異常な蛋白質の塊であるレビー小体が出現する。認知機能の異常に加えて手足のこわばりなどのパーキンソン症状、さらには抑うつや幻覚などの症状を伴う。会見の中で、この疾患の診療を巡る課題として、一部の専門医を除き医療者の理解が不十分である点を挙げた。同氏を受診したレビー小体型認知症患者の多くが初期症状であるパーキンソン症状やうつ状態から誤診されていたという。中には、幻視の症状から統合失調症とされ、抗精神病薬を投与されて症状が悪化したケースもあった。
また、小阪氏が認知症患者の剖検例で調査したところ、レビー小体型認知症は認知症全体の2割程度を占めていたが、厚生労働省研究班の調査では4.3%にとどまっており、この数字の乖離からも、誤診の多さが推測される。小阪氏は、抑うつや幻視、睡眠時の異常言動などの行動・心理症状(BPSD)を伴うレビー小体型認知症に罹患した患者や家族の「苦しみや苦労は尽きない」と語ったうえで、早期診断と適切な治療が重要と強調した。
◎認知症の行動・心理症状に関するアリセプトの効果 検証を継続
1999年にアルツハイマー型認知症の適応で発売されたアリセプトは、脳内アセチルコリン濃度を増強する作用があることから、かねてからレビー小体型認知症の治療でも有望視されていた。2007年以降、この適応症での開発が進み、この9月19日に承認に至った。アルツハイマー型認知症での特許期間は終了しているが、レビー小体型認知症での承認取得に際しては4年間の再審査期間が設定されている。
レビー小体型認知症でのアリセプトの治験成績を見ると、認知機能については臨床第2相試験(P2)とP3のいずれでも有意な改善が示されている。ただ、BPSDに関しては、P3においてプラセボ群と実薬群での有意差が示されなかった。小阪氏はこの背景について「(P2の実施時期に比べてP3の実施時期では)患者家族会が立ち上がり、疾患の啓発活動が進み、患者やご家族が関連ホームページなどで情報を収集し、対応するようになってきた。そうした対応の変化がプラセボ群においても良好な結果を生み、差が出にくくなったのではないか」との見方を示した。P3の結果を受けて承認条件には臨床試験の実施とその結果提出が付与されている。