わかりやすい文章を書けないと、「愚か者」と呼ばれるぞ
公開日時 2014/04/15 00:00
イーピーエス株式会社
榎戸 誠
【わかりやすい文章】
わかりやすい文章を書く人と、そうでない人の評価は、どんどん差が開いていってしまうだろう。
『わかりやすい文章を書く技術』(樋口裕一著、フォレスト出版)は、新書判ではあるが、内容が濃い。
「現代社会において、文章力は大事だ。文章が苦手だと、レポートも書けない。報告書も書けない。他人を説得することもできない。手紙を書くことも億劫になる。もし、文章を書いて、それが支離滅裂であったなら、周囲から『愚か者』という扱いを受けるかもしれない」と、最初から手厳しい。
しかし、がっかりすることはない。「ビジネスマンのほとんどは、文学作品を書こうとしているのではないはずだ。わかりやすくて、すらすら読めるメール、企画書などを書こうとしているはずだ。論理的に書かれ、論点が整理されており、すぐに文意が伝わる文章が求められている。そうであれば、文才など、まったく必要ない」というのだ。
「少しだけ練習をし、文章の書き方の基本を知れば、誰でもすぐにわかりやすい文章を書けるようになる。もし、あなたの周囲にいる人がほかの人よりもわかりやすい文章を書くことができるとすれば、それは『才能』のおかげというよりは、これまでの練習のおかげだ」。
【60字を超えない】
よい文章とは何か。一言で言えば、「わかりやすい文章」である。「わかりやすい文章は、読者の心に自然と入り込む。そして何らかの影響を与える、自分の意見を理解してもらいたいなら、わかりやすい文章を読ませるに限る」。すなわち、読み手が納得できる文章を目指せというのである。
だらだらと長い文章は、相手に伝わりにくい。著者は、1つの文章の文字数が60字を超えないようにせよと強調している。
【論理的な文章】
「わかりやすい文章が書けない人の多くは、論理が不足している。論理は、モヤモヤした『わかりづらい文章』を返上するための大事な武器となる」。論理を手軽に身に付ける方法として、新聞の投書欄を読む習慣をつけることを推奨している。
「文章が得意ではない初心者は、先に結論を言った方がいい」。全く、同感である。
よい文章、すなわち論理的な文章は、4つのブロックで構成される。①問題提起、②意見提示、③展開、④結論――である。大抵のビジネス文書やリポートは、「①の問題提起で、まず主張をはっきり言う。②の意見提示で、自分の主張とは反対にあたる情報も織り込んでいく。③の展開で、主張の裏づけとなる具体的な事例などを入れていく。④の結論で、すっきりとまとめる」という4ブロックの活用で対応できてしまう。
【説得力を高める】
「推敲することにより、文章の質は間違いなく高まっていく」。これも、全く同感だ。推敲に当たっては、「切る作業」が欠かせない。「『切る』には2種類ある。文章を短く切って句点『。』を増やしていくことと、余計なエピソードなどを切って『消去』していくことだ」。
文章に説得力を持たせるには、箇条書きを有効に使うことだ。またまた、同感である。私は箇条書きが好きで、ビジネス文書のみならず、メールや手紙でも、「1、2、3」と番号を振るほどである。番号を振って書き始めると、言いたいことが不思議なほど整理できるのだ。騙されたと思って、ぜひ試してほしい。
【練習が必要】
各章の最後に置かれている「頭が悪いと思われる文章チェック」は、大変役に立つ。悪い例文と修正例文、ならびに解説が具体的に示されているので、実戦的な訓練を積むことができるからだ。
「書き方のコツを知るのと、実際に書けるようになるのは別のことだ。自分でそれなりの練習をしてこそ、本当に書けるようになる。だから、実際に書けるようになるためには、これから、少々の練習が必要だ」。そして、「これから先、より文章力を磨くために、もうひとつしていただきたいことがある。それは、たくさんの文章を読むことだ」。まさに至言である。