長く続く痛みで6割「現在通院せず」 医師との治療目標の共有に難しさ
公開日時 2013/07/11 05:01
ファイザーが行った、長く続く痛みである「慢性疼痛」に関する患者と医師の意識比較調査によると、患者の約6割が痛みがあっても現在通院していなかった。回答者の半数以上が挙げた理由では、「痛みが緩和した」ことを挙げる一方で「治療の効果が感じられない」との回答も挙がった。
同社は慢性疼痛の治療薬を扱っている。この調査では、慢性的な痛みで通院経験のある全国20歳以上の男女5150人と、治療経験のある医師103人を対象にインターネットで行ったもの。
患者が感じている「痛み」について、9割の患者が「持続的な痛み」「断続的な繰り返し起こる痛み」だとし、8割以上では「鈍い痛み」「重い痛み」だった。約8割が整形外科に、約に2割が内科に通院していた。
通院を中断した理由を尋ねたところ、51.6%が「痛みが緩和したため」とする一方で、「治療の効果が感じられない」も57.1%に上った。「費用の面で負担が大きい」も53.7%だった。
通院中の患者と中断した患者の違いを見たところ、通院中の患者は医師と治療目標を確認していることが多く患者の半数近い47.6%に上るのに対し、中断中の患者では20.4%。医師の治療内容の理解度については、通院中の患者が高く、81.3%が「理解している」のに対し、中断中の患者は58.0%だった。
治療を継続するには、医師と患者が治療内容や目標について互いが状況を理解し、認識を共有する対話が欠かせないとこがうかがえるが、医師は61.2%は「治療目標を確認した」としているが、患者は34.3%しかそう認識していなかった。
対話できていない理由としては、医師、患者とも最も多いのは時間のなさ。医師の88.9%がそう感じ、患者は「医師が忙しそう/時間がなさそう」としたのが38.3%だった。次いで、患者が自分の症状をうまく伝えられないこと。医師の33.3%、患者の26.6%だった。
時間がない中で、症状を把握したい医師と、伝えたい患者との間で互いにもどかしさを感じていることがうかがえた。
日本大・小川教授 治療目標に医師と患者にギャップ
この調査結果について、疼痛治療に詳しい日本大学総合科学研究所の小川節郎教授は、「近年、痛みのメカニズムの解明や新しい治療薬の登場など、痛みを取り巻く環境は大きく変化してきています。一度治療を中断された人も、改めて医療機関に相談するとよい」とした。
また、治療目標について、患者と医師の認識の違いを指摘。患者は「痛みの軽減」と同程度に「痛みの完治」を期待しているのに対し、医師は治療の難しさから「痛みの軽減」と「日常生活動作の改善」を目標に考えているとし、対話を重ねて目標について理解を深めていくことが重要だとしている。