【ACC.12特別版】CHA2DS2-VAScの活用でCHADS2 1点の患者の脳卒中発症リスク層別化が可能に
公開日時 2012/03/29 05:00
心房細動患者の脳卒中発症予測において、CHADS2スコアが1点の患者を、“CHA2DS2-VAScスコア”を用いることで、低リスクと高リスクに層別化できることが分かった。AVERROES、ACTIVE試験で抗血小板療法のみを受けていたCHADS2スコア1点の4670例を対象とした解析から浮かび上がってきた。3月24日から米国・シカゴで開催されている第62回米国心臓病学会議(ACC.12)で25日に開かれた、米国不整脈学会との合同セッション「 Management of the Patient with Atrial Fibrillation – Anticoagulation and Prevention of Stroke 」で、McMaster UniversityのMichiel Coppens氏が報告した。
心房細動患者における脳卒中のリスクスコアとして広く用いられているCHADS2スコアは、心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中/TIAの既往(2点)の5項目(最高6点)の合計点でリスクを表す。2点以上の患者に抗凝固療法が推奨されている。
これに対し、CHA2DS2-VAScは、2010年に欧州心臓病学会(ESC)が提唱した指標で、75歳以上を2点にしたほか、65~74歳、女性、末梢血管疾患(PAD)または心筋梗塞の既往の項目を新設した。
Coppens氏らは、CHADS2スコアが1点の患者を対象に、CHADS2の代わりにCHA2DS2-VAScを用いることで、脳卒中の危険因子の管理を改善できるか検討した。なお、CHADS2スコア1点の患者への治療法や介入法は、現在までに、明確なコンセンサスが得られていない。
解析対象は、AVERROES、ACTIVEの2試験で、抗血小板療法のみが行われていたCHADS2スコアが1点の4670例(アスピリン:2240例、アスピリン+クロピドグレル:2430例)。65歳未満の患者は41%、65~74歳が48%だった。もっとも高頻度の危険因子は高血圧で79%だった。CHA2DS2-VASc で新たに加えられたリスク因子である女性は34%、PADの既往は2%、心筋梗塞の既往は9%だった。
CHA2DS2-VAScスコアに当てはめると、1点は26%(1224例)2点は42%(1984例)、3点は29%(1338例)、4点が3%(124例)で、74%がより高スコアに分類された。
対象患者の虚血性脳卒中または非中枢神経系塞栓症(SSE)の発生率は、1.8 (1.6~2.1)%/年だった(追跡期間11414(患者・年))。
Kaplan-Meier法を用いた検討から、CHADS2スコア1点を、CHA2DS2-VAScスコア1点と2~4点の2集団に層別化できることが分かった。CHA2DS2-VAScスコアが1点の患者に絞ってみると、発生率は0.9%/年と、リスクが低かった。一方、2点では2.0%/年、3点では2.4%/年で、大きな開きがあった。
◎新たな危険因子 年齢のリスク寄与が大きく
Coppens氏らはさらに、CHA2DS2-VASc で新たに加えられた危険因子が与える影響を多変量解析した結果も紹介。年齢65歳未満のリスクを1とすると、65~74歳は1.9[1.4-2.6])、75歳以上は2.2(1.4-3.5)、PAD/MI既往なしを1とすると、既往ありは1.0(0.7-1.4)、男性を1とすると女性は1.3(1.0-1.8)で、これら因子のうち、年齢の寄与が最も大きいことが分かったとした。
Coppens氏は、①すべての患者がアスピリンを投与され、2剤併用療法を受けている患者もいる②CHADS2スコア0点の患者集団に関するデータがなく、どう再層別化されるか不明である――ことなどをあげ、研究に限界があるとした。
一方で、治療法について明確なコンセンサスが得られないCHADS2スコアが1点の患者を対象にした最大規模の解析であり、注意深く補正された無作為化試験から抽出したデータであると、同解析の意義を強調した。
その上で、「 CHA2DS2-VAScスコアを用いることで、CHADS2スコアが1点の患者を、低リスク(1%/年)と比較的高リスク(>2%/年)とに分けることが可能になる」と結論付けた。