【esc特別版】脳卒中の再発抑制 虚血性脳卒中やTIA患者の8割にスタチン投与を
公開日時 2012/05/25 05:00
脳卒中の再発抑制の観点から、虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)患者の80%にスタチンを投与すべき――。5月22~24日の日程で、ポルトガル・リスボンで開催されている第21回欧州脳卒中学会議で、22日に開かれたTeaching Course「Stroke prevention」の中で、デンマークのH.Christensen氏が、自身の考えを示した。
Christensen氏は、英国の中年男性を対象にした疫学データから、HDL-C値が高値になるにつれ、脳卒中発症リスクが減少する一方で、トリグリセライド(TG)高値では血管イベント発症のリスクを上昇すると説明した。
一方で、LDL-C値低下療法については、スタチンとプラセボを比較した22試験(13万4537例)、スタチンの投与量で比較した5試験(3万9612例)を対象としたメタ解析の結果を提示。低リスク患者での5年間の脳卒中発症リスクは10%未満であると説明した上で、LDL-C値を1mmol/L低下させることで、5年以上にわたり、大血管イベントの絶対リスクを11/1000低下させるとのデータを紹介した。
コクランライブラリーには、これらのエビデンスを踏まえ、出血性脳卒中の既往歴がある患者への有効性を示すエビデンスが明確にないことから、「冠動脈疾患(CHD)の既往歴がある患者と、CHDの既往にかかわらず虚血性脳卒中とTIAの患者には、スタチンを投与すべき」と記載されている。さらに、欧州脳卒中機構(ESO)のガイドライン(GL)でも、血中コレステロールの定期的な測定とともに、スタチン投与がClassⅠ、LevelAで推奨されていることも紹介した。
これに対し、HDL-C値上昇の効果については、CETP阻害薬・torcetrapibの臨床試験で死亡と大血管イベントのリスク上昇が報告された一方で、新薬として期待を集めるCETP阻害薬・anacetrapibの臨床試験「REVEAL」が進行中であることから、今後のエビデンス構築に期待をみせた。そのほか、HDL-C値を上昇させるナイアシンやフィブラート系薬剤についても、リスク低下効果を示すエビデンスが明確にないと指摘した。
そのほか、最近スタチンをめぐり、可逆性のミオパシーと、糖尿病が高率な発症、痴呆、ALSなどの神経障害との関連などが指摘されていることも紹介。ミオパシーについては、スタチンの作用機序から、その下流に存在するCoQ10の生成が阻害されていることが原因である可能性を示唆した。その上で、Christensen氏は、「一般的に、マイルドな有害事象とハードエンドポイントで、有効性が報告されている」と述べ、スタチンの有効性を強調した。