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ARTIS 脳梗塞急性期 rt-PAにアスピリンの早期追加投与の有用性見いだせず

公開日時 2012/07/30 05:00

脳梗塞急性期の標準療法である、rt-PA(アルテプラーゼ)静注に加え、アスピリンを早期に投与することは、転帰良好との関連がみられず、逆に症候性頭蓋内出血(SICH)の頻度を増加させることが分かった。「ARTIS(Antiplatelet Therapy in combination with Rt-PA Thrombolysis in acute Ischemic Stroke)」の結果から示された。5月25日に開かれた「Large Clinical Trials」セッションで、University of AmsterdamのYvo Roos氏が報告した。


脳梗塞急性期の治療法として唯一承認されているのが、アルテプラーゼの静脈内投与だ。再開通を得たものの、再閉塞が起こる患者が14~34%みられるという報告や、初期症状の改善はみられるものの、その後の臨床的悪化は67%に見られるとの報告もある。これらは、血小板活性化が原因とみられている。一方で、心筋梗塞患者では、抗血栓療法にアスピリンを追加投与することで、死亡率を大きく減少し、SICHの頻度を増加させないことも報告されている。


このような中で、試験は、脳梗塞急性期の標準治療であるrt-PA療法に抗血小板薬・アスピリンを追加投与することで、3カ月後の機能的転帰を改善するか検証する目的で、PROBE法で実施された。


対象は、rt-PA療法の適格基準を満たし、抗血小板療法を実施していない、急性虚血性脳卒中患者。標準療法であるrt-PA療法に加え、治療開始から90分以内に、300mgのアスピリンを静脈投与を行う群(アスピリン追加群)と、行わない群(標準療法群)に分け、治療効果を比較した。主要評価項目は、ITT(intention to treat)解析による、3カ月後の転帰良好(mRS(modified Rankin Scale):0~2)。


目標症例数は800例だったが、中間解析の結果、アスピリン追加群でSICHの発生が有意に上昇し、安全性が懸念されることから、データモニタリング委員会が早期中止を勧告。2011年5月20日に試験の早期中止がなされた。試験期間は2008年1月29日~11年4月20日までで、オランダの37施設で実施された。


◎SICHとの発現上昇 36時間以内の投与で多く


患者背景は、平均年齢(アスピリン追加群:67.1歳、標準療法群:66.7歳)、脳卒中再発前のmRS0~2の割合(アスピリン追加群:303例(94.1%)、標準療法群:299例(93.4%))などには両群間に大きな差はみられなかった。ただ、高血圧、糖尿病、脳卒中の既往がアスピリン追加群で多い傾向もみられた。アルテプラーゼ投与開始から、アスピリン投与までの平均時間は、67.0分だった。有効性の解析は、アスピリン追加群174例、標準療法群183例を対象に実施された。


その結果、主要評価項目の良好な転帰は、アスピリン追加群では、54.0%(174例)で、標準療法群の57.2%(183例)で、絶対リスク差は-3.2%(95%CI:-10.8-4.5)、相対リスク(RR)は0.94(0.82-1.09)、オッズ比(OR)は0.88(0.64-1.22)で、両群間に有意差はみられなかった(p=0.42)。合併症、既往歴、性別、年齢、治療開始までの時間などを加味した、調整オッズ比も0.91(0.66-1.26)で有意差はみられなかった(p=0.58)。
一方で、ITT解析対象群に発生した重篤な有害事象は、アスピリン追加群(322例)で61例、標準療法群(320例)では43例で、アスピリン群で多い傾向が示された。特にSICHはアスピリン追加群で65例、標準療法群では50例で、絶対リスク差は2.8%(0.2-5.4;RR:2.78(1.01-7.63))で、有意にアスピリン群で多い結果となった(p=0.04)。per-protocol解析でも、同様に絶対リスク差は3.3%(0.5-6.1、RR:3.14(1.14-8.61))で、有意にアスピリン追加群で多い結果となった(p=0.02)。


SICHの発現は、36時間以内がアスピリン追加群12例、標準療法群では4例で、両群ともに多いことも分かった(p=0.07、per-protocol解析ではp=0.04)。また、SICHの発生が転帰不良の原因となったのはアスピリン追加群で7.4%(11例)、標準療法群で0.7%(1例)で、有意にアスピリン追加群で多い結果となった(RR:10.18(1.33-77.83)、p=0.006)。


これらの結果から、Ross氏らは、「抗血栓療法への早期のアスピリン追加投与は、SICHのリスクを増加させ、臨床成績を上昇させなかった」と結論付けた。抗血小板療法は、アルテプラーゼ投与の24時間以降に行うことを推奨するGLの内容に合致した結果となったとした。

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