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【JCS事後リポート】NIPPON DATA 心電図のJ点上昇、Na/K摂取比が循環器疾患のリスク因子に

公開日時 2013/05/07 05:00

循環器疾患のリスク因子として、心電図での早期再分極所見のJ点上昇、ナトリウム(Na)/カリウム(K)摂取比、長鎖n-3系不飽和脂肪酸(EPA+DHA)の摂取量の少なさなどが浮かび上がってきた。長期コホート研究NIPPON DATA(National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Aged)の最新解析から示された。3月15~17日まで、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された第77回日本循環器学会のLate Breaking Cohort Studies セッションで3月16日、滋賀医科大学公衆衛生学の三浦克之氏が報告した。


NIPPON DATAは、循環器疾患基礎調査、国民栄養調査(1980年、1990年)および国民健康栄養調査(2010年)対象者の長期コホート研究。2010年以降は、厚生労働科学研究費・指定研究として実施されてきた。現時点で、NIPPON DATA80は1980年の循環器疾患基礎調査(対象者:1万546例)を29年間、NIPPON DATA 90は、1990年の循環器疾患基礎調査(対象者:8334例)を20年間追跡が完了している。


方法は、5年ごとに対象者の在住市町村に住民票を請求し、生死および転出を確認する。死亡の場合には人口動態統計データとの照合により死因を把握する。得られたデータから、これまでにベースラインの血圧や血糖値が将来の循環器疾患死亡リスクの予測因子であることなどが示されてきた。これに基づき、冠動脈疾患、脳卒中、全循環器疾患について10年間の死亡リスク評価のためのチャートが作成されている。


今回、心電図所見(早期再分極所見のJ点上昇)や、栄養素と循環器疾患リスクとの関連などについての解析結果が新たに報告された。


心電図所見と循環器疾患リスクとの関連性については、NIPPON DATA 90の15年追跡データを用いて、J点上昇と循環器疾患死亡リスクとの関係を分析した。多変量(年齢、BMI、喫煙、飲酒、服薬状況、収縮器血圧、総コレステロール、HbA1c、心拍数、心電図所見(左室肥大、冠動脈疾患疑を調整))補正後に、下側壁のJ点上昇例では上昇がみられなかった症例と比べ、循環器疾患による死亡リスクが3.84倍、心疾患による死亡リスクが5.56倍、冠動脈疾患による死亡リスクが9.44倍に上昇していた。前璧のJ点上昇例でも、循環器疾患死亡リスクが1.17倍、心疾患死亡リスクが2.07倍、冠動脈疾患死亡リスクが3.87倍だった。


三浦氏は、欧米から早期再分極所見であるJ点上昇と、循環器疾患死亡リスクとの関連が最近報告されていることを紹介。その上で、「日本人においても、早期再分局所見が将来の循環器疾患死亡リスクを予測することが分かった」と説明した。


◎n-3系不飽和脂肪酸摂取でリスク低下の可能性も


栄養素と循環器疾患リスクとの関連については、NIPPON DATA80の24年追跡データから、ナトリウム/カリウム摂取比が高いほど、総死亡、循環器疾患死亡、脳卒中死亡リスクが高い傾向があることが分かった。


また、年齢、性、BMI、喫煙、飲酒、服薬状況、収縮期血圧、血清コレステロール、血糖値、居住地、飽和脂肪酸、n-6系不飽和脂肪酸、食物繊維、ナトリウム摂取量補正後において、長鎖n-3系不飽和脂肪酸(EPA+DHA)の摂取量が最も少ない群に比べ、最も多い群では、循環器疾患死亡リスクのハザード比(HR)が0.80で、20%の有意なリスク低減が認められた(p=0.038)。 調査開始時年齢が39~50歳の若年者に絞ると、最も多い群の循環器疾患死亡リスクは、最も少ない群に比べ、 HRが0.68で、さらに顕著なリスク低下がみられた(p=0.031)。さらに、n-3系脂肪酸摂取量が多い群では、心電図のJ点上昇や、安静心拍数上昇に伴う循環器疾患リスクの上昇がみられず、n-3系脂肪酸摂取により、これらのリスクを抑制できる可能性も示唆された。なお、日本人では、摂取量が最も少ない群でも、欧米人と比べると、摂取量は多いという。


現在進行中のNIPPON DATA 2010についても三浦氏は説明。同調査は、これまで国によって10年ごとに行われてきた循環器基礎疾患調査の後継調査で、厚生労働科学研究費・指定研究として研究班が実施している。対象者約3000例の同意を得て、追跡を開始している。三浦氏は、「NIPPON DATAは国民代表集団のコホート研究として循環器疾患危険因子に関する重要なエビデンスを創出してきた。今後、1980~2010年の国民の生活習慣と危険因子の推移解析を進めるとともに、NIPPON DATA2010によって、最新の国民におけるエビデンスを創出していきたい」と述べた。

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