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【UEGW事後特集】LAVENDER試験が臨床現場にもたらすもの 島根大医学部内科学講座第二教授・木下芳一氏に聞く

公開日時 2012/11/05 05:00

CYP2C19代謝活性によらず同様の有効性 潰瘍再発リスクは1/10に
 

日本人を含む東アジア人を対象に初めて、プロトンポンプ阻害薬・エソメプラゾールの低用量アスピリン服用者に対する胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制効果を大規模臨床試験で示した「LAVENDER(Low-dose Aspirin-related ulcer recurrence preVENtion unDER esomeprazole20mg treatment)」。すでに欧米では広く用いられている同剤を日本の臨床現場で用いることができるようになることのインパクトを中心に、研究責任医師である、島根大学医学部内科学講座第二教授の木下芳一氏にお話を伺った。
 

低用量アスピリンは、心血管系疾患発症抑制などを目的に投与されているケースが多く、高齢者の多くが内服しています。これら患者のうち、10%前後の患者に胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発生するのですが、症状からは潰瘍の発症が分かりづらく、また消化管出血の合併症が発生すると予後が悪くなります。そのため、消化性潰瘍や消化管出血の発症予防を目的とした介入が重要になります。
 

日本では、低用量アスピリンを継続投与している患者において、潰瘍の再発予防を目的とした治療薬は2012年6月まではランソプラゾール1剤のみでした。したがって、アレルギーなどの副作用が出現すると他に選択肢がないためランソプラゾールを中止せざるをえませんでした。このため、ランソプラゾール以外の有効な保険適応薬の登場が待たれていました。
 

潰瘍の発症リスクは、出血性潰瘍の既往歴がある患者で最も高く、次いで出血のない潰瘍の既往歴のある患者が高いと言われています。 LAVENDER試験では、低用量アスピリンを使用する患者で、出血の有無にかかわらず、潰瘍の既往を有するかどうかを内視鏡で確認した患者を対象にしています。
 

◎用量20mgで効果のばらつきが少なく 逆流性食道炎にも対応可能
 

今回発表した48週間の追跡結果では、プラセボ群では高頻度に潰瘍が再発していたのに対し、エソメプラゾール群では再発率をプラセボ群の1/10までに抑制しました。また潰瘍だけではなく、びらんについても、エソメプラゾール群ではプラセボ群よりも、ベースラインからの改善を示した患者の割合が高くなっており、エソメプラゾールにはびらんを抑制する効果もあることが示されました。

投与量が20mgであることも重要なポイントです。この用量は、逆流性食道炎の適応用量と同じ用量です。一般的にPPIは、用量依存性の副作用の発生頻度の増加が少ない、安全域が広い薬剤です。そのため、減量せずに投与できることは、効果のばらつきを少なくするだけでなく、エソメプラゾール20mg1剤で逆流食道炎と潰瘍再発予防のいずれにも対応できるというメリットもあります。
 

◎抗血小板薬・クロピドグレルとの併用も効果減弱のリスク少なく
 

薬物代謝酵素・CYP2C19の遺伝子型によらず一貫した治療成績を示したことが臨床へのインパクトが大きいと感じています。日本人では、一般的に代謝酵素活性が低い例(poor metaboliser)やヘテロ型(CYP2C19*1/*2)と呼ばれる代謝活性が中間型の割合が、欧米人に比べ高いことが分かっています。
 

これまでの知見から、同じ適応を持つ、ランソプラゾールは、一般的にこの酵素を介して代謝されるため、代謝活性が低下した人では効果を発現しやすく、一方で、酵素の代謝活性が高い人では十分な効果を示さないなど、効果にばらつきがあることが指摘されていました。 しかし、エソメプラゾールは、CYP2C19の影響を受けづらいという特性があります。そのため、サブグループ解析で、遺伝子型に分けて検討した結果でも、潰瘍の発生抑制効果には差がみられず、どのグループでも同様に高い効果を示すことが分かりました。
 

CYP2C19で代謝されることが知られる代表的な薬剤として、抗血小板薬・クロピドグレルがあります。冠動脈ステント留置術施行後の症例では、一般的にアスピリンとクロピドグレルの抗血小板薬2剤併用療法が行われています。
 

クロピドグレルとPPI の併用では、in vitro(試験管内)では、2剤併用による競合阻害が認められています。臨床試験では、これを裏付ける十分なエビデンスはないものの、クロピドグレルとPPIの併用により、結果的に十分なクロピドグレルの有効性が発揮できないのではないか、との懸念があります。このような中にあって、CYP2C19の代謝による影響を受けづらいエソメプラゾールは、クロピドグレルとの相互作用のリスクが少ない可能性があるとも期待できます。
 

CYP2C19の遺伝子活性型は、遺伝子検査で結果が分かりますが、保険適用されていないことなどから、臨床現場では活用するのが難しいのが現状です。このような中にあって、遺伝子型によらず、高い治療効果を示すことの意義は大きいのです。
 

今回のデータから、エソメプラゾールは、年齢や性別、H.pylori感染の有無、アスピリンの投与量などの患者背景によらず、一貫して高い潰瘍再発抑制効果を示しました。特にプライマリケア医にとって、こうした患者背景を調べるために検査を実施しなくても、エソメプラゾールを20mg投与すれば、皆同等に潰瘍の再発リスクを1/10以下にまで抑制出来ることは、大きな意義があると思います。
 

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