【SABCSリポート】BEATRICE 早期トリプルネガティブ乳がんの術後補助化学療法にベバシズマブ追加投与も生存期間の延長みられず
公開日時 2012/12/07 05:00
浸潤性早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC、エストロゲン受容体、プロゲステロン
受容体、HER2の全てが陰性)において、術後の補助化学療法にベバシズマブを追加しても、追加しなかった場合と比べ、無浸潤性疾患生存(IDFS)は延長しないことが、臨床第3相ランダム化オープンラベル多施設試験「BEATRICE」の結果から分かった。12月5~8日まで米サンアントニオで開催された、第35回サンアントニオ乳がんシンポジウムのGeneral Sessionで英University of EdinburghのDavid Cameron氏が12月7日に発表した。
一般的に予後が悪いTNBCは、分子標的療法の治療選択がなく、補助化学療法による治療効果についてもデータが限られている。その中で、エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性の腫瘍では、血管新生を促進する血管内皮成長因子(VEGF)が高濃度に発現することから、VEGFに結合し、がん細胞の増殖を抑制するベバシズマブは、化学療法との併用でTNBCにもベネフィットがあるのではないかと期待が持たれていた。
原発巣を切除しTNBCが中央施設で確認された、浸潤性早期乳がん患者2591例を対象に、治験医師が選択する標準的な化学療法(4~8サイクル)を受け、その後観察を続ける被験者群(CT群、1290例)か、同様の化学療法にベバシズマブ(5mg/kg/週)を追加する併用療法を行った後、ベバシズマブの単剤療法(ベバシズマブの投与が合計1年間)を行う被験者群(CT+BEV群、1301例)に割り付けた。化学療法の選択は、タキサン系を4サイクル以上か、アントラサイクリン系を4サイクル以上、アントラサイクリン系+タキサン系を各3~4サイクルの3種類とした。また被験者を、腋窩リンパ節の転移(0 vs 1~3 vs 4以上)と補助化学療法の種類、ホルモン受容体(陰性 vs 低発現)、手術(温存手術 vs 乳房切除)により階層化した。
主要評価項目はIDFS、副次評価項目は全生存(OS)、乳がん無再発期間、無病生存、無遠隔病生存、安全性、バイオマーカーに設定した。IDFSは、ランダム化から、浸潤性乳がんの再発、または対側乳房での浸潤性乳がん、乳がん以外の二次(原発)浸潤がん、全死までの期間と定義した。
ベースラインの患者背景に群間差はなく、年齢(中央値)は両群とも50歳、腫瘍サイズはT2(2cm以上5cm未満)が最も多くCT群が59.0%、CT+BEV群が58.2%、乳房温存手術はCT群63.3%、CT+BEV群63.6%だった。腋窩リンパ節で転移がなかったのはCT群63.1%、CT+BEV群63.3%、1~3カ所転移があったのは、それぞれ25.3%と24.8%。CT群の58.6%とCT+BEV群の57.8%がアントラサイクリン系+タキサン系の化学療法を受け、それぞれ87.3%と88.6%が放射線療法を受けていた。
追跡期間(中央値)は、CT群31.5カ月、CT+BEV群32.0カ月、IDFSにおけるそれぞれのイベント数は205件(15.9%)と188件(14.5%)。3年間のIDFS率は、CT群が82.7%だったのに対し、CT+BEV群は83.7%(ハザード比(HR):0.87、95%CI: 0.72 – 1.07、p=0.1810)で、併用群に有意な延長はなかった。あらかじめ設定したサブ群による解析でも、併用群が有意に優れているサブ群はなかった。
OSは、必要とされるイベント数の59%を達した段階での中間解析で、HRは0.84(95%CI:0.64 – 1.12、p=0.2318)だった。
両群の99%に有害事象が発生し、そのうちグレード3以上がCT群で57%、CT+BEV群は72%に発生した。CT+BEV群でベバシズマブの中止に至ったのは18%だった。CT+BEV群で顕著だったグレード3以上の有害事象は、高血圧(併用時7%、単剤時5%)と、鬱血性心不全および左心室機能不全(併用時1%未満、単剤時2%)、タンパク尿(併用時1%未満、単剤時2%)だった。
Cameron氏は、「早期TNBCに特化した初めてのランダム化第3相試験であり、3年IDFSは想定よりも良好だった」と前置きした上で、補助化学療法にベバシズマブを1年間加えた併用療法は、IDFSの有意な延長を示せなかったと結論付けた。またOSの解析は、イベント数が340例に達するか追跡期間の中央値が5年に至った時点で行われるとし(2013年末の予定)、更なる追跡でベバシズマブによる潜在的な影響を調べる必要があると強調した。