【ISC2013事後リポート】治療開始30分の遅れが予後良好の可能性を10%低下
公開日時 2013/03/19 04:00
サブグループ解析では、治療開始時間が30分遅れることで、予後良好の可能性が10%低下することが示され、血管内治療の成績に時間が大きく影響する可能性が示唆された。
解析は、発症から血管造影法で再灌流までの時間が延長するにつれ、良好な転帰が得られる可能性が減るという仮説を検証する目的で実施された。対象は、中大 脳動脈M1、M2またはICAの閉塞があり、血管内治療を施行し、再開通(TICI2/3)を7時間以内に得た患者とした。評価項目は、再開通までの時間 と、予後良好例の割合。
患者のうち、ICA、M1、M2の閉塞がみられたのは240例。平均年齢は66歳、NIHSS(中央値)は18、画像上の早期虚血を表すASPECTSで 0~4は14.8%(35例)だった。TICI2/3の再開通を得たのは76%(182例)で、M1が54%(98例)、M2が28%(51例)、ICA が18%(33例)だった。症候性頭蓋内出血を発生したのは6.6%(12例)、死亡は19%(35例)だった。mRS0~2は40%(73例)だった。 発症から血管内治療を終える/再開通までの時間は、平均325±52分間(180-418分)。内訳は、発症からt-PA静注療法までの時間は 121±34分、t-PAの静脈投与から鼠径部穿刺までが81±27分、穿刺から動脈治療まで42±21分、動脈療法の開始から終了まで81±43分だっ た。
再開通までの時間と予後良好との関連は、30分遅くなるにつれ、予後良好になる可能性が14%有意に減少することが分かった(リスク比:0.86、95%CI:0.78-0.95、p=0.0045)。
さらに、ベースラインの患者特性と手技の時間で調整した多変量解析モデルでは、30分再開通が遅れることで、予後良好になる可能性が10%減少することが分かった(リスク比:0.90、95%CI:0.82-0.99、p=0.02)。
結果を報告したUniversity of CincinnatiのPooja Khatri氏は、「動脈内血栓溶解療法後の再開通による機能予後改善は、時間に大きく依存している」と指摘した。その上で、「早期に血管内治療を施行す ることで、良い結果を得ることができたかもしれない」とし、「急性脳卒中の臨床ケアと今後の再開通療法をめぐる臨床試験では、スピードの重要性が強調され るべき」との見解を示した。
表 多変解析モデル(ベースラインの患者特性、手技の時間で調整)
変量 |
リスク比 |
95% Confidence Interval |
p-value |
再開通までの時間(30分の遅れ) |
0.9 |
0.82-0.99 |
0.02 |
ベースラインのASPECTS 5-10 |
3.7 |
1.25-11.00 |
0.01 |
発症前の機能障害なし |
2.61 |
1.05-6.50 |
0.01 |
NIHSS 8-19 (vs ≥20) |
1.64 |
1.07-2.51 |
0.01 |
(Khatri et al. ISC2013, Feb. 8 in Honolulu)