若手エリートの転職
公開日時 2012/12/06 04:00
安定した仕事から転職をしようとする若者達。そのウラにはやむにやまれぬ事情がある。
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有名大学を卒業し、大手企業に就職、あるいは公務員に。そんな他人も羨むようなキャリアの若者たちでも、転職相談にやってくることがある。
大手企業に勤務する人の場合は、震災、あるいはここ数年の企業業績が影響していることが多い。日本を代表する企業と思って就職したが、業績が一転、リストラ(人員削減)が始まった、買収や事業分割の噂が出ている、そうした背景から、将来を考えて、早いうちに他の企業に転職しようというわけだ。
「業績が悪いから辞めるなんてことを言っていたら、どこも勤まらない。自分たちの世代で企業を立て直してやろうという気概はないのか」
と、言いたくなる方もあろうと思うが、ことはそう簡単ではない。
業績不振から新卒採用をギリギリまで絞るということになると、若手社員は、当分のあいだ、雑用業務から抜け出せない。とくに安定大手企業の場合、超高学歴の新人に、アルバイトでも十分勤まりそうな単純業務を任せているところが少なくない。たとえばチラシ配り・配達・電話番・メーターの検針…。
こうした仕事をさせるのは、現場の苦労を知ること、高学歴の妙なプライドを捨てさせることなど、それなりに意味もあるのだが、若い時期の2年3年は大きい。経験・能力に見合った仕事に就けないのは、キャリアにとって大きな痛手だ。加えて、大手企業に就職して安定を得たつもりが、もはや将来が約束されないとなると、他の企業に転職したくなるのも、致し方ないことだろう。
別の要素もある。数はまだまだ多くないが、最近増えつつある公務員からの相談では、忙しすぎるという転職理由を頻繁に耳にする。予算削減で人は増やせないが、こなさなければならない入力業務やら事務処理がヤマのようにあり、繁忙期になると、毎日のように深夜までの仕事が続くというのだ。
とかく『お役所仕事』と揶揄される公務員だが、転職の相談のなかでは、むしろ信じられないようなハードワークの話が出てくる。
「公務員は今も昔も9時5時の仕事。昔は帰る時間が午後5時、今は午前5時」というから、その凄まじさが伝わってくるというものだ。
さて、そんなこんなで若くして職を変えようという転職者だが、キャリアと呼べるモノがほとんどないため、未経験可・ポテンシャルを評価して、採用してくれる求人を探すことになる。第二新卒採用が一般的になり、未経験のキャリア採用の育成に、それなりの経験値がある企業が多くなってきたが、決して全員がすぐにフィットするわけではない。
Iさん(25歳)。トップクラスの私大を出て、大手エネルギー企業へ。しかし、将来性を不安を感じて、金融A社へ転職した。
資質は高い。頭の回転がはやく、コミュニケーション能力は平均以上、転職活動中の評価はどこでもかなり良かった。しかし、A社ではなかなか仕事に馴染むことが出来ず、本人の満足度も高くなかった。
「仕事が面白いってどういうことなんだろうって、ついつい考えちゃうんです。結果を出せって言うけど、結果ってなんだろうって…」
前職では、やりがいのある仕事を任せてもらってきていないので、A社で一気に仕事に目覚めてもいいはずなのだが。我々は、具体的にどこが気に入らないのかとIさんに訊ねてみた。
「前の会社は、たしかにやっていることは面白くはなかったんですけど、やるべきことが明確でした。A社はどこまでやったら終わりということがなくて」
「う~ん。それは、ほとんどの仕事で同じようなものですし、そこが面白さにつながっていると思うんですけどねぇ」
と我々が首をかしげると、Iさんはそれ以外にもさまざまな不満不平をあげてきた。
小一時間、話を聞くなかで見えてきたのは、彼がA社で仕事をしていくイメージ、自分ならこういうふうにやってみよう、こういうことをしてみたい、と考えることを十分にしてこなかった経過だった。
面接では、仕事内容に関する話が必ず出る。だが、企業側は未経験・若手の採用となると、多少的外れな回答があったとしても、「分からないことがあっても仕方がない。十分な資質があるのだから、すぐに順応できるだろう」と考えてしまいがちだ。
Iさんは察しがよく、相手に合わせた喋りがうまいが故に、その空気を読んで
「採用する側が、楽観的なのだから、きっと自分ならすぐに仕事をこなせるはずだ」
と、そこで考えが止まっていた。A社で仕事をしていくことについて、深く思いをいたすことなく入社まで進んでしまっていたのだ。
就職活動は往々にして「会社選び」になるが、転職は第二新卒であっても配属先が指定されている求人がほとんどなので、「仕事選び」という感覚を持たなくてはならない。企業をみるのではなく、仕事をみる。そこが成否の分かれ道になっているように思える。
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