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【AHA特集】FREEDOM 多枝病変有する糖尿病患者対象にCABGがPCIへの優越性示す GLの内容を支持

公開日時 2012/11/08 06:56

多枝病変を有する糖尿病患者において、冠動脈バイパス術(CABG)は、薬物溶出性ステント(DES)による経皮的冠動脈形成術(PCI)に比べ、有意に心筋梗塞や全死亡などの発生が少ないことが分かった。すでに欧米でのGLでは、対象患者に対してCABGが推奨されているが、よりエビデンスレベルが強固になったと言えそうだ。医療経済的観点からも、長期的にはCABGで費用対効果が高いことも示された。多枝病変を有する糖尿病患者の最適な血行再建術を検討した最大規模の前向き試験「FREEDOM(Future REvascularization Evaluation in patients with Diabetes mellitus:Optimal management of Multivessel disease)」の結果から示された。11月3~7日まで米国・ロサンゼルスで開催されている米国心臓協会年次学術集会2012(AHA2012)で、11月4日に開かれたセッション「Late-Breakling Clinical Trial」で報告された。(米国・ロサンゼルス 望月英梨)


冠動脈血行再建術の施行数は年間100万件ともされている。多枝病変を有する患者も少なく、このうち25~30%を糖尿病患者が占めるとされている。一方で、血行再建による有害事象の発生が高率であることも指摘されている。BARI研究では、CABG施行がPCI留置に比べ、生命予後が改善されることが示されている。


試験は、多枝冠動脈疾患の治療戦略において、5年間の長期成績において、DES+積極的な薬物療法の施行がCABGへの優越性を示すことができるか検討することを目的に実施された。対象は、多枝冠動脈疾患と糖尿病を合併する患者1900例。世界140施設から2005~10年の間に登録された。


糖尿病は1型、2型を問わず、▽糖尿病の症状を呈す、または血漿グルコース値の絶対的上昇(食後2時間または随時血漿グルコース値>200mg/dL)▽空腹時血漿グルコース値≧126mg/dL――。多枝冠動脈疾患については、▽血管造影法で多枝病変が確認され、PCI/CABG施行の可能性がある(右冠動脈(RCA)、左冠動脈前下行枝(LAD)、左冠動脈回施枝(LCX)の異なる2つ以上の冠動脈で2カ所以上の狭窄(≧70%)がみられる)▽狭心症±心筋虚血の客観的なエビデンスに基づいた、血行再建術の適応――を条件とした。一方で、重篤な心不全、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)、心原性ショックの患者などは除外した。


①多枝病変への薬物溶出性ステント(DES)留置+アブキシマブ投与群953例②CABG群947例――の2群にランダムに割り付け、治療効果を比較した。糖尿病の薬物療法については、A1C<7.0%、LDL-C<70mg/dL、血圧値<130/80mmHgを目指した治療を行うこととしたほか、クロピドグレル、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、スタチンの併用は可とした。主要評価項目は、全死亡+非致死性心筋梗塞+脳卒中の発生率。


患者の平均年齢は63.1±9.1歳、女性は29%、3枝以上の病変を有する患者は83%含まれていた。SYNTAXスコアはPCI群で26.2±8.4、CABG群で26.1±8.8、狭窄数はPCI群で5.7±2.2、CABG群で5.7±2.2だった。5年時点で、アスピリンの投与はPCI群で95%、CABG群で93%、チエノピリジン系薬剤は、PCI群で42%、CABG群で16%、スタチンはPCI群で89%、CABG群で91%だった。


◎心筋梗塞、再血行再建術はCABG群で有意に減少 脳卒中は増加傾向も


5年後の主要評価項目の発生率は、CABG群の18.7%(147例)に対し、PCI群では26.6%(205例)で、CABG群で有意に少ない結果となった(p=0.005)。5年間の治療成績の2群間の差は、7.93ポイント(95%CI:3.33-12.54)で、有意差がみられた(p<0.001)。さらに、解剖学的に病変の複雑さを反映したスコアである、SYNTAXスコアに分け、治療成績の影響を加味した結果も、同様の傾向を示した(p=0.58)。


内訳をみると、心筋梗塞の発生率は、CABG群で6.0%(54例)、PCI群で13.9%(118例)、全死亡はPCI群の16.3%に対し、CABG群では10.9%で(差:差:7.93%、95%CI:1.49-9.19)、いずれも有意にCABG群で低率となった(p<0.0001、0.007)。再血行再建術は、PCI群の13%に対し、CABG群では5%に減少した(p<0.0001)。一方で、脳卒中の発生率は、PCI群2.4%、CABG群では5.2%で、CABG群でわずかな増加がみられたが、有意差はみられなかった(p=0.034)。これらを加味したMACCE(死亡+脳卒中+心筋梗塞+再血行再建術)も、PCI群17%、CABG群12%で、CABG群で有意に発生率が低い結果となった(p=0.004)。


結果を報告したMichael A. Eiener Cardiovascular InstituteのValentin Fuster氏は、「進行した冠動脈疾患と糖尿病を合併した症例では、CABGはPCIに比べ、恩恵を有意に得るころができる」と指摘。「多枝病変を有する糖尿病患者で血行再建術を行う上で、CABGが推奨される」と結論付けた。


Discussantとして登壇した、Boston University Medical CenterのAlice K.Jacobs氏は、現行のガイドライン(GL)として、欧州心臓病学会(ESC)の心筋血行再建術のガイドライン(GL)2010と、米国心臓協会(AHA)などの「PCI and CABG GL」を紹介。いずれも多枝病変を有する糖尿病患者へのCABGは推奨グレードB(行うよう勧められる)、エビデンスレベルⅡa(ランダム割り付けを伴わない同時コントロールを伴うコホート研究)で推奨されているとした。その上で、今回のエビデンスが構築されたことで、「多枝病変を有する糖尿病患者において、クラスⅠエビデンスを提供した」と同試験の意義を強調し、現行GLの内容が強固に支持されたとの見方を示した。




◎医療経済でも長期成績はCABGに軍配 



同試験では、米国の医療システムの中で、費用対効果についても解析を実施した。その結果、初期治療では、CABG群がPCI群よりも8622ドル高い結果となった。

一方で、追跡期間の5年間の間で、PCI群はCABG群に比べ、PCI留置(CABG群:3.3%、PCI群:6.8%)やCABG施行(CABG群:0%、PCI群:1.7%)が有意に多い結果となった(p<0.001)。


PCI群ではまた、心血管イベントによる入院が有意に多く(CABG群:10.8%、PCI群:17.2%、p<0.001)、一方でそれ以外の理由による入院はCABG群で多い傾向がみられた(CABG群:14.6%、PCI群:12.8%、p=0.52)。
これらを踏まえて、質調整生存年(QALYs)をみると、4年時まではPCI群で良好な結果だったが、5年時にはCABG群でPCI群を0.031年上回った。5年次で費用はCABG群で3641ドル上回っており、これらの結果から増分費用対効果(ICER)は11万6699ドル/QALYと算出された。生涯で算出したCABG施行によるQALYsは0.663年で、コストは5392ドルPCIを上回った。ICERは8132ドル/QALYだった。


結果を報告したSaint Luke’s Mid America Heart InstituteのElizabeth A.Magnuson氏は、多枝病変を有する糖尿病患者に対し、CABGは長期的な臨床成績だけでなく、費用対効果でも長所があると指摘。今回の解析により、「多枝病変を有する糖尿病患者において、GLがCABGを推奨する上で、追加的に支持するデータを提供した」と述べた。                                                              

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