大塚とルンドベック 中枢神経領域でグローバル・アライアンス
公開日時 2011/11/14 04:02
大塚製薬の岩本太郎社長とデンマーク・ルンドベック社のウルフ・ウインバーグCEOは、11月11日に徳島県にある大塚製薬の徳島研究所内で共同会見し、中枢神経領域におけるグローバル・アライアンス契約を締結したと発表した。提携の対象となるのは、大塚製薬の統合失調症治療薬アリピプラゾール(製品名:エビリファイ)の持効性注射剤(IMデポ剤)やOPC-34712という同社の今後の中枢領域での事業を支える新薬候補品と、ルンドベックの研究開発品を含め最大5化合物。これにより同領域における2社の合計の売上規模は、世界で米イーライリリーに次ぐ2位に浮上することになる(現在は大塚製薬が第3位=シェア12%、ルンドベックは第5位=シェア9%)。
提携の対象となった大塚製薬のアリピプラゾールのIMデポ剤は統合失調症の月1回注射製剤で、コンプライアンス向上による再発予防の改善効果が期待される薬剤。現在、米国FDAにIND申請(現在申請受理待ち)の段階。OPC-34712はアリピプラゾールの後継品と位置付ける開発品で、現在統合失調症と大うつ病補助療法のフェーズ3が進行中で、既存の大うつ病の補助療法に比べ、優れた有効性と忍容性を示すとされる。一方、ルンドベックの化合物の詳細については、会見では開示できないとの理由から明らかにされていない。これについては、大塚製薬が後期臨床第2相試験終了後に、共同開発・共同販売契約をする権利を有し、「今後10年間にわたって、後期フェーズに入ってくるものから選ぶ」(岩本社長)としている。
開発・販売地域は米国・カナダ・欧州主要5カ国は・北欧4カ国は大塚製薬とルンドベックが共同で実施。日本や中国などアジアなど11カ国は大塚製薬、それ以外はルンドベックが単独で実施する。契約一時金、開発進捗達成金、売上達成金を含めると、大塚製薬は最大で18億ドルをルンドベックから受け取ることになる。
◎新領域への挑戦も可能に、BMSとの提携は継続へ
この提携によって、両社の事業展開地域や開発領域が拡大する。日・米・アジアに強みをもつ大塚製薬に対し、欧州を中心に南米・新興国に強みを持つルンドベック。得意とする研究開発領域も中枢神経でパイオニアという点で両社は共通するが、抗精神病領域を中心に展開してきた大塚製薬に対し、抗うつ剤・不安薬領域では世界トップシェアで、さらに統合失調症から気分障害、アルコール依存症、アルツハイマーまで幅広い疾患を研究開発も含めてカバーしているルンドベックとの提携は、「新しい切り口により、既存の価値を磨き、新規領域への挑戦を可能にする」(岩本社長)という期待がある。
同社にとっては、成長ドライバーであるアリピプラゾールの最大市場である米国での15年4月の特許切れ後への懸念への対応が大きな課題。アリピプラゾールの錠剤は、米国市場でBMSとの提携によって大きな成功を収め、グローバル売上は3658億円(10年度、約8割は米国の売上)で同社の売上高(連結)の3割を占めるまでになった。岩本社長は会見で、コモディテイ化、技術変化、新規参入、政府の方針変更などにより、同剤の売上が減少していくとの見通しを提示。そのうえで、成長ビジョンとして「中核事業を進化させて、拡大したり、近隣の事業をやりたい」と述べ、「中核事業の進化」としてアリピプラゾールのIMデポ製剤、「隣接中核」としてOPC-34712について、ルンドベックとのアライアンスにより、製品価値の最大化を図る方針を示した。
一方、アリピプラゾールの錠剤については、米国で開発・販売契約を米BMSと継続中だ。岩本社長は、同剤のデポ剤や後継品などについて、ルンドベックという新たなパートナーと組む理由について、「ビッグファーマを含めて多くの会社と交渉し、ルンドベックを最高のパートナーとして契約を結んだ」と説明。「BMSとのアライアンスは医薬品市場のなかで最高の結果を出したと自負している。引き続きアリピプラゾールの錠剤でビジネスを継続していく」と語った。
ルンドベックは中枢神経系医薬品に特化した製薬企業。抗うつ剤・不安薬領域では世界トップシェア。世界57カ国(欧州は32カ国)で事業展開し、従業員数5866人。世界55カ国で2000人のMRが活動している。