PMDA・池田氏「デバイスラグの課題は申請前の遅れ」
公開日時 2011/09/16 04:00
DESの承認状況は欧米の1~3年遅れ
独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の池田浩治氏は、7月23日に開かれたタウンホールミーティング「進化し続けるDrug Elutig Stent!!進化したDESをいち早く本邦で、使用できるようにするために、我々は何をしなければならないのか?」で日本と海外との新規医療機器承認までの期間差(デバイスラグ)について「申請後の遅れは解決しつつあり、申請前の遅れの方が深刻である」との認識を表明。日米の医療機器規制について、実践を通じた整合化を目的に03年からスタートした日米産官学による共同活動「HBD(Harmonization By Doing)」により、新規医療機器の国際共同臨床試験が行えることが確認できたと語った。
池田氏はデバイスラグの原因として、申請前については①必要な試験が不透明②臨床試験に要する時間が長い③臨床試験に対する理解不足④企業側の開発が日米で同期しない⑤企業側の日本での開発優先順位が低い――。申請後については、①承認審査体制の不備②審査担当の理解不足・対応遅延③申請担当の理解不足・対応遅延――などがあげられるとした。
その上で、薬剤溶出ステント(DES)の日米の承認状況は、日本での各種DES承認がアメリカから1~3年ほど遅れていることを例示した。
一方、新医療機器のここ数年の行政側の平均審査期間について、優先審査品目では2007年度8.6カ月、08年度5.8カ月、09年度6.0カ月、10年度5.3カ月、通常審査品目では07年度から順に7.7カ月、9.8カ月、6.8カ月、7.1カ月。申請者側の所要期間はデータが公表された09年度以降では、優先審査品目で09年度7.7カ月、10年度10.7カ月、通常審査品目では順に7.1カ月、8.2カ月であり、「申請後の審査期間は、ここ数年ほとんど変わっておらず、むしろ申請前の遅れが目立つ」と説明した。
国際共同臨床試験の推進で試験の質向上も
申請前の状況について池田氏は、「日本では元々、医療機器の臨床試験の件数が多くなく、医療機器メーカーも医療機関も臨床試験に慣れておらず、臨床試験の質が低く、時間も要するとの指摘もある」と発言。
HBDでは、日米での臨床試験の単一プロトコールや共同臨床試験の実施、両国規制当局の情報交換を推進しており、「これまでの検討からHBD傘下のワーキンググループで両国のGCPには差がないことが確認された」とした。
また、池田氏はHBDの推進により国際共同臨床試験が標準になれば、新規医療機器に対するアクセスが容易になり、日本企業の医療機器の海外進出も加速するほか、医療機関や医療機器メーカーの経験蓄積で臨床試験の質向上につながるとの見解を示した。
その上で、HBDの下で日米共同で臨床試験が進められたゾタロリムス溶出ステント(ENDEAVOR、日本メドトロニック)、エベロリムス溶出ステント(XIENCE、アボット・ジャパン)については、それでもデバイスラグは残ったものの「日本で国際共同臨床試験ができることが実証され、参加した医療機関や医療機器メーカー、行政に自信を与えることになった」と評価した。
今後の課題としては、国際共同臨床試験をより容易にする体制整備や日本国内の開発推進のための仕組み作りの重要性を強調した。