一時の気の迷い
公開日時 2011/08/02 04:00
同じ会社から転職相談に来た二人。しかし、その中味は両極端なものだった。
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転職理由は千差万別、人にそれぞれに違っている。重要なことはひとつ。それが一時の気の迷いか、それとも変わらない思いなのか、ということである。
専門商社A社に勤務する、営業Gさん(32歳)とマーケティング部門Tさん(29歳)は、個別に転職を考えるようになり、ほぼ同時期に我々のところに相談にやってきた。
二人は「キャリアを伸ばすために転職したい」と、言ったが、その内容はみごとに両極端なものだった。
GさんはA社の経営方針の転換で、自分の望んでいた営業が出来なくなったと訴えた。
「震災でいくつかの取引先が被災して、業績が悪化。その後、扱う商品の数が一気に増えたんです。専門商社ならでは、情報力のきめ細かいサービスがA社のウリだったのに…。いまや、カネの匂いのするところには何でも飛びつくような営業になっています。これまで培ってきた専門知識を活かせる会社に転職したいんです」
一方のTさん、最初は「仕事が任せてもらえない」「尊敬できる上司がいなくて…」などと、常套句を並べていたが、場の雰囲気になれてくると、ぶっちゃけ話を炸裂させてきた。
「どうしても直属の上司に耐えられないんです。コンサル任せで仕事はろくにしないくせに、嫌味で陰険でしつこくて。これまでは接触する機会が少ないから何とか耐えてきましたが、部署のなかで中堅になるこれからは、そういうわけにはいかないんです」
社会情勢の変化で経営方針がかわり、転職を考えるようになったGさん。個人的な好き嫌いで会社を移ろうとしているTさん。
ちょっと聞くと、Gさんの方が転職の理由としては筋が通っているよう思える。しかし、少し話を詳しく聞いていくと、別の面が見えてくるのだ。
Gさんは、自分が持っている不満について、まだ上司と話をしたことがなかった。震災の影響の大きさを考えれば、現在のA社の状況は緊急対応的なもので、危機がされば以前のような営業に戻ることは十分に考えられるはずだ。
また、いわゆる目端を利かせて、儲けばなしにクビを突っ込んでいく営業にも、学ぶところがないわけではない。それはキャリアの幅を作るという意味で、後々、Tさんを助けてくれることになるかもしれない。
一方、Tさんだが、入社した時から苦手にしている上司は、A社役員の遠い親戚で上司が辞める要素はゼロ。十年以上マーケティング部門をみているので、他の部署への異動も考えにくい。
Tさんは、マーケティングの仕事の面白さに目覚めてきているので、仕事をやらせて欲しいと上申したが、上司は相変わらず肝心な部分を外部会社に任せてしまうので、我慢して働き続ける意味も見いだすことが出来なかった。
我々は念のため、二人共に転職の再考を促したが、結局、実際の転職活動に動くことになったのは、Tさんだけであった。
Gさんは「A社がどこに向かうつもりなのか、しっかり確認して」という我々のアドバイスをうけ、応募書類を出すこともなく、転職活動を休止としたのだった。
体裁の整った転職理由が、転職者本人にとって正しいわけではない。自分が感じている不満・不安は、時間が経っても解決されないことなのか、異動願いを出す手はないのか、転職しなければ変えようがないことなのか?
一時的な気の迷いなのか、それとも、変わらぬ思いなのか。転職したことを後悔しないためには、その一点だけは、しっかり突き詰めて考えなければならないのだ。
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