キャリアコンサルタントの独り言 第1回 ヘッドハンティングの裏側(上)
公開日時 2011/04/05 04:00
株式会社インテリジェンス
DODAキャリアコンサルタント/メディカルグループ マネジャー
堀 学
カウンセリング現場の中で、ヘッドハンティングについての質問をよくいただく。医薬品業界は金融業界に次いで、ハンティングが一般的であり、一説にはMRの10人に1人はお抱えのハンターがいるという話もあるため、その話題は身近であり興味のあるところなのだと思う。
ハンティングのリストは、企業側から個人指名に近い形で収集できるケースと、過去や現在で接点のあった個人顧客からの紹介によって収集できるケースが多い。なぜ自身の情報が知られているのかを気にする方は多いが、組織図や論文等の公表データからの収集や、ヘッドハンターと接触のある同僚が、「身近にいる優秀な人材」を紹介、あるいは競合他社のMRを推薦するケース等、情報源は複数ある(実際に、採用を目的として競合他社のMRについて積極的な情報収集を推奨する企業も多い)。また、情報源の中にはいわゆる“名簿屋”と言われるような存在も確かにある。そのため、情報元を限定するのは困難であり、情報のルーツを探ることに意味はないのだ。
ヘッドハンターが、アポイント後に個人顧客を「見限る」パターンは多くは2つある。ひとつは、なぜ自分の情報を知っているのかに固執し、最後まで疑心と警戒を持っているタイプ。もうひとつは、ヘッドハンティングを受けている自分を必要以上に過大評価し、キャスティングボードを握ろうとするタイプだ。そもそも、ヘッドハンティングを受けることがすなわち提案企業への内定が約束されるというわけではなく、約半数が選考途中で不採用となるのが実態だ。
逆に、ヘッドハンターが大切にする顧客は、ハンターを情報収集の有益なツールと位置付けて、信頼関係を築ける顧客だそうだ(中には、数十年と付き合いを続ける場合もある)。その顧客は往々にして、提案された企業が自身にとってプラスになり得るかどうかを判断するために、知りたい情報や条件を明確にハンターに伝える。そうすることでハンターは依頼主の企業へのアプローチがしやすく、動きやすくもなる。また、個人顧客との関係が深まることにより、直接的な依頼主とは異なる企業も提案しやすくなる。当初目的としていた企業以外で成約するケースは、実は意外に多いのだ。
あるハンターはこう言う。「身構えず、普通にしていただければいいんです」。
医薬品業界の中では、ヘッドハンターとの付き合い方も重要だ。