クロピドグレル 虚血性炎症における新たな役割示唆
公開日時 2011/03/09 04:00
CSPS2とCASISPの併合解析結果
P2Y12受容体の阻害作用が免疫活性を抑制か?
血小板上のADP受容体であるP2Y12受容体に強力に結合し、血中のADPと受容体の結合を阻害することで効果を発現するクロピドグレル。この“P2Y12受容体”を阻害することが、免疫転写因子であるNF-κβの核転座、ひいては免疫活性の抑制につながる可能性が示唆された。米・カルフォルニア州のCarla Webster氏が2月10日、ポスターセッションで報告した。
Webster氏らは、in vitro(試験管内)とin vivo(生体内)の脳虚血モデルを用いて、プリン受容体であるP2Y12の欠損またはクロピドグレルによる阻害作用が、マイクログリアへの作用を通じた神経保護作用をいかに発揮するか検討した。
P2Y12受容体は主に血小板とマイクログリアに存在する。マイクログリアのP2Y12受容体は細胞遊走の制御にかかわっているとみられているが、これまで十分な研究は行われていなかった。
in vitroの実験では、神経細胞とアストロサイトの共培養下に、マイクログリアを添加すると、神経細胞死が増加した。一方で、マイクログリアにおけるNF-κβの欠損は、神経細胞死を抑制し、マイクログリアの集団化を防ぐことが分かった。また、P2Y12受容体のアゴニストであるATPは、細胞遊走が起きる濃度ではNF-κβの活性を抑制するものの、それ以上の濃度では逆に活性を増強させることも示された。
Webster氏らは、P2Y12受容体が脳虚血における神経毒性に関与している可能性を指摘。神経保護作用は、「アストロサイトに対する作用ではなく、壊死した神経細胞にマイクログリアが遊走するのを抑制することによるのかもしれない」との見解を示した。
一方、In vivoの実験では、マウスの両総頸動脈結紮モデルを用い、①P2Y12野生型②P2Y12欠損群③クロピドグレル投与群――に分け、比較した。その結果、P2Y12欠損群およびクロピドグレル投与群では、脳虚血から神経細胞が保護されたほか、海馬CA1領域および歯状回におけるマイクログリアの活性を抑制した。
そのほか、マイクログリアにおけるNF-κβの核転座の抑制もみられた。そのため、「P2Y12受容体の欠損や、抑制は、NF-κβの核転座、さらには免疫活性を抑制するように見える」とWebster氏らは指摘し、「これらの結果はクロピドグレルの付加的な効果を示唆している」との考えを示した。