【ASHリポート】ダサチニブ Ph+ CML-CPで高い細胞遺伝学的完全寛解と分子遺伝学的寛解
公開日時 2010/12/14 06:45
ダサチニブは新たに診断された慢性期フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML-CP)でイマチニブと比べて、早期により高い細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)と分子遺伝学的寛解(MMR)が得られることがわかった。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNeil Shah氏が12月6日、第52回米国血液学会(ASH)年次総会のオーラルセッション「Chronic Myeloid Leukemia - Therapy: Optimizing Treatment Outcome」でダサチニブとイマチニブの効果を評価した第3相臨床試験「DASISION」の18か月の追跡結果として報告した。
DASISION試験は、Ph+ CML-CPと診断されてから3か月以内で、ハイドロキシウレア、アナグレライド以外の治療歴を有さない、26か国108施設の519例を対象に実施した非盲検無作為化比較試験。対象患者をダサチニブ100mg1日1回投与群259人、イマチニブ400mg1日1回投与群260人の形で割り付けた。12か月目までのCCyR(ITT解析)はダサチニブ群83%、イマチニブ群72%。CCyR達成した症例での達成期間中央値はダサチニブ群3.1か月、イマチニブ群5.8か月でダサチニブ群ではより早くCCyRが達成される傾向があった。
また、18か月以内に28日以上間隔を置いて2回連続してCCyRを評価したうえでの確定したCCyR(ITT解析)は、12か月目までがダサチニブ群77%、イマチニブ群67%(p=0.0086)、18か月目までがダサチニブ群78%、イマチニブ群70%(p=0.0366)で、18か月目までの追跡結果でもダサチニブ群の方が高い割合を示した。全体でのMMR達成率はダサチニブ群57%、イマチニブ群41%(p=0.0002)であり、MMR達成した症例での達成期間中央値はダサチニブ群8.3か月、イマチニブ群11.8か月。
Ph+ CMLの原因となるBcr-Ablタンパクの発現量が0.0032%以下となる分子遺伝学的完全寛解(CMR)はダサチニブ群13%、イマチニブ群7%だった。Hasford疾患リスク分類別のMMRは低リスク・グループでダサチニブ群63%、イマチニブ群48%、中リスク・グループでダサチニブ群56%、イマチニブ群40%、高リスク・グループでダサチニブ群51%、イマチニブ群30%といずれもダサチニブ群で高かった。移行期・急性期への病勢進行率はダサチニブ群2.3%、イマチニブ群3.5%。
一方、主な有害事象(全グレード)は、表在性浮腫(ダサチニブ群10%、イマチニブ群36%)、胸水(同12%、0%)、筋肉痛(同22%、38%)、悪心(同9%、21%)、嘔吐(同5%、10%)、下痢(同18%、19%)、疲労感(同8%、11%)、頭痛(同12%、10%)、発疹(同11%、17%)だった。
グレード3以上の副作用は少なく、両群とも各副作用で1%以下の発現率だった。
概して各副作用ともイマチニブ群の方が頻度が高かったが、胸水だけはダサチニブ群だけで発現していた。胸水例の処置方法(重複処置あり)は、投与中止77%、減量42%、利尿剤処方42%、コルチコステロイド処方35%、胸腔穿刺10%。
グレード3以上の血液毒性は貧血がダサチニブ群11%、イマチニブ群7%、好中球減少症がダサチニブ群22%、イマチニブ群20%、血小板減少症がダサチニブ群19%、イマチニブ群10%で、全般的にダサチニブ群の発現頻度が高く、血小板減少症では特に顕著だった。なお、グレード3以上の出血はダサチニブ群2例、イマチニブ群3例。
両群ともグレード3以上の各検査値異常は概ね5%以下だったが、イマチニブ群では血清リン値低下が24%(ダサチニブ群5%)に認められた。