【AHAリポート】クロピドグレル低反応性患者 CABG施行前に5日間の休薬期間必要ない可能性
公開日時 2010/11/18 11:00
クロピドグレル低反応性の患者では、ガイドライン(GL)で推奨される5日間の休薬期間を設けずにCABGを施行しても出血イベントを増加させない可能性が示された。米国心臓協会(AHA)2010年次学術集会で11月15日開かれたセッション「Clinical Science:Special ReportsⅡ」で、米・ボルモチアのSinai Hosp BaltimoreのElizabeth Mahla氏が「TARGET CABG Study(Time-Based StRateGy to Reduce Clopidogrel AssociaTed Bleeding DuRing CABG)」の結果を報告する中で明らかにした。
米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のGLでは、出血イベントの発症を抑制する目的で、CABG実施の5~7日前からクロピドグレルの投与を中止することが求められている。一方で、休薬期間中に心血管イベントの発症リスクが増加することも指摘されており、CABGの施行時期をめぐり議論となっている。
試験は、Thrombelastrography(TEG)を用いて測定したADP-induced platelet-fibrin clot-strength(PFCS)に基づき、CABGの施行時期を決めることで、クロピドグレルの投与の有無によらず、出血リスクは同等となることを証明する目的で実施された。
対象は、CABGを施行する入院患者で、PFCSをCABG施行直前、直後、24時間後の3ポイントで行えた140例。①クロピドグレル投与群50例②クロピドグレル非投与群90例――の2群に分け、出血イベントの発症率を比較した。
クロピドグレル投与群では、入院時のPFCSレベルに基づき、手術時期を決定。①低反応性群(non-responders)>50mm 2uM ADP-PFCS②中等度反応性群(semi-responders)>35~50 mm 2uM ADP-PFCS③反応性群(responders)<35 mm 2uM ADP-PFCS――とし、低反応性群では早期、中等度反応性群では3日後、反応性群では5日後とした。
その結果、手術を早期に実施した群(平均値:2.5±1.7日後)は、クロピドグレル投与群と比べ、出血イベントを増加させないことが分かった。そのほか、赤血球の輸血や胸腔ドレナージの増加もみられなかった。そのほか、CABGの施行により、血小板数や血小板機能低下を引き起こすことも分かった。
Mahla氏は、「クロピドグレル投与群に対し、TEGを用いた血小板機能を用いてCABGの施行時期を最適化することの有用性を示した最初の前向き試験」と試験を評価した。
その上で、「クロピドグレル低反応性の患者では、GLで推奨されている5日間休薬する必要がない」と指摘。早期にクロピドグレルの投与を開始することで、「血液製剤の使用と入院期間の延長によるコストを有意に削減する可能性がある」としている。