厚労省 ドラッグ・ラグ問題改善で先進医療制度見直し案 中医協に
公開日時 2010/11/11 04:00
ドラッグ・ラグ問題で厚労省保険局医療課は11月10日、一定の要件を満たせば、公的保険が適用される診療技術と公的保険外の未承認薬等を併用して使える先進医療制度を見直し、未承認薬や未承認適応薬(未承認薬等)の承認申請につなげる提案をまとめた。主に関心の高い抗がん剤が対象。同日、同省は中医協総会に提示し、検討を求めた。同省は来年3月までに結論を得たいとしているが、検討の内容によっては見直し効果は限られたものになるおそれもある。
今回の見直しは、先進医療制度の中の未承認薬等を用いた治療技術が対象となる「高度医療」制度を中心にしたもの。この制度では、未承認薬は自費扱いだが、関連診療部分は保険が適用される。制度の利用を医療機関側が厚労省に申請して、関連会議で実施を認めるか否かを審査する。それには実施希望医療機関が実績を作る必要があるが、そのためには施設側の出費が高額に上り実施が難しかったり、審査が2つの会議にまたがり非効率であったりといった問題があった。そこを同省は、施設側の費用負担の軽減、審査の一元化により、より使いやすい制度にし、ドラッグ・ラグの改善にもつなげようと提案した。
また、現行制度で実施された臨床試験データが、GCPに沿っていないケースもあり、薬事承認申請するには、改めてGCPに沿った試験(治験)を行わなければならなかった。その問題に対しては、省内の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(有識者会議)で開発の必要性ありと判断された未承認薬等について、高度医療の中で実施する臨床試験を一定の質を確保し、申請に活用できるようにすることを提案。GCP適用されているのかなどデータの質の高さに応じて「薬事承認審査の一定程度の効率化」も図るとしている。
この制度を利用すれば、いち早く必要な薬剤を使える可能性が広がるが、特に有識者会議と連携する案では、この見直しルートに乗る薬は限られたものになるおそれがある。現時点では見直し案の具体的な運用は不明だが、開発の必要性と判断された薬剤は、現行では基本的にはメーカーが治験を行う流れになっており、仮に医師が治験を行う場合も含め、治験はすでに保険診療と併用でき、この見直しルートに乗る必要性がないからだ。
このルートに乗る可能性があるのは、治験実施メーカーがなく、治験ではない形で医師が臨床試験を行うケース。しかし、有識者会議が開発の必要性を認めながら、開発メーカーがないケースは1割未満と非常に少ない。その場合、仮に申請できても、薬剤を誰が供給するのかは大きな課題で、中医協委員からも製薬業界の協力が必要との指摘が出ている。
一方、有識者会議との連携がないルートは、世界初の治療薬をいち早く使え、それを生み出す可能性はあるが、現時点の提案では「薬事承認審査の一定程度の効率化」までは盛り込まれておらず、高度医療の枠組みで臨床試験を行っても、改めて治験を行うという2度手間になる現行制度の問題点には触れられていない。
厚労省は、審査体制、実施医療機関の要件、データの質の確保の方法など具体策については、次々回の中医協にも示すとしており、それを受け中医協で詳細を詰めていく。