デキる男を演出する方法
公開日時 2010/10/12 04:00
同窓会に出席したSさんは、そこで旧友が女性達から厚い視線を集めていることに気づいた。その理由とは…。
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とある週末、Sさん(26歳)は中学の同窓会に出席した。昔の仲間との会話は楽しく進んだが、ふと気づくと、中学時代は目立たない存在だった旧友Cさんの周りに大きな輪が出来ていた。
「さっきから、メールばっかり気にしているけど、カノジョ?」
周囲の興味津々の様子に、Cさんは慌てて返事をした。
「違うよ。仕事のことでさ、ちょっと…」
「休みの日に仕事のメールなんて、大変ね」
「仕事って言っても、会社じゃなくて転職エージェントなんだよ」
「え?C 君って、専属のエージェントがいるの?」
「う、うん。まあ…」
「他の会社からスカウトされているの?」
「正確には違うけど、まあ、そんな感じ。先週、最終面接を受けて、来週にもひとつあるから、今がヤマ場なんだよ」
「すご〜い!!!」
その時、またCさんの携帯が鳴った。
「ちょっとゴメン。もしもし、連絡来ましたか?はい、はい、良かったです。でも、そっちの条件は難しいと思います。最初の提示とは違ってますし…」
様子を見ていた女性たちは、声が聞こえない距離になると、
「C君、あかぬけて見違えちゃったね。かっこよくなった」
「なんか、仕事が出来るオトコって感じだよね」
と口々に言い合っていたのだ…。
脇で見ていたSさんは「これだ!」と確信した。彼には、想いを寄せる女性Eさんがいたのだが、友人として日頃顔をあわせていながら、なかなか自分をアピールすることが出来ずにいたのだ。
「エージェントからスカウトを受ける自分の姿を見せれば…」
Sさんは早速、転職活動に乗り出した。
仲間内の飲み会の席、SさんはEさんの目の前でこれ見よがしに、ケータイを気にしている様子をみせた。
「どうしたの?誰かくるの?」
待ってましたとばかりSさんは真剣な表情をつくった。
「いや、エージェントからの連絡が遅くなっててね」
「エージェント?」
「転職のだよ。僕に紹介したい会社があるんだって」
「S君、転職するの?」
「まだ分からないよ、条件次第かなあ」
「どんな会社に行くつもりなの?」
Sさんは、ここぞとばかりに自分の夢を語った。
「へえ。そんなこと考えていたんだ」
EさんがSさんを見る視線には、いつにない、憧れの色がこもっているように見えた。「大成功だ」Sさんはその夜、意気揚々で帰宅の途についた。
次の日の朝一番、Sさんは部署の苦手にしている先輩からいきなり呼び出しをもらった。先輩は唐突に言った。
「お前、転職するつもりって本当なのか?」
「え?え?」
「どうやら本当らしいな。黙っていたいところだが、知っていて何もしないと、俺の責任問題になる。こうなった以上、上に報告させてもらうぞ」
「そ、その話、誰から聞いたんですか?」
「昨夜、お前の友達から直接聞いた」
「ま、まさかEちゃん?」
しかし、昨夜Eさんと別れたのは、深夜近く。その後に直接会っていたということは…。
「ごめんね。ちょっと前から付き合うようになったんだけど、恥ずかしくて言いだしにくくって…。カレに引き合わせてくれたのはS君なんだから、S君にはちゃんと報告すべきだったね。ホント、ごめんね」
Eさんの弁明を、Sさんは上の空で聞いていた。
「転職の件は、S君があんまり堂々としているから、秘密ってわけじゃないんだなと思っちゃったの。特に口止めもされなかったし。会社にバレてまずいことにならないかな?大丈夫?」
その夜、Sさんは我々のところに電話をかけてきた。
「転職したいんです」
「え?分かってますよ。ですから、こうして毎日求人紹介を…」
事情を飲み込むまでに10分ほどかかった我々だが、恋の演出に利用されたことを咎める気にはならなかった。Sさんは、もう十分すぎる報いを受けていたのだから。
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