愛人候補?
公開日時 2010/10/05 04:00
A社の社長秘書には、美人だけが最終選考に選ばれていた。その理由とは…。
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「人気男性マジシャンと女性アシスタントは、たいていデキている」
都市伝説かと思いきや、その世界では常識とされているのだとか。曰く「アシスタントを魅了できなければ、観客を魅了できるわけがない」
納得できる面もないではないが、やはりステレオタイプが入っているようにも思える。ありがちな2人。たとえば、そう、社長と美人秘書のように…。
不動産A社の社長秘書求人の募集要項には、あいまいな表現が並んでいた。それは採用担当からの要望が、ハッキリしていなかったからだった。
「秘書経験はもちろんあれば良いですが、なくても構いませんよ。業界の知識は不要です。S(A社社長)が気持ちよく接することができる相手と言いますか…、まあ、要は社長との相性が一番大切ということですかね。とにかく、出来るだけたくさん紹介をお願いします。スクリーニングは私がしますので」
A社のS社長とは、他の求人案件で、直接やりとりをしたことが何度もある。カリスマ性がありながら、非常に率直で、誰とでも上手く付き合えそうな人物だ。どうも採用担当のコメントはピンとこない。そう思いながら、我々は紹介をスタートさせることになった。
応募条件がゆるいA社の求人には、多くの人が手を挙げた。だが、人事の1次面接を通過する人のキャリアは実にまちまち、ただ1点を除いて…。
秘書という役職上、応募のほとんどは女性だったが、そのなかでも若く、容姿端麗な女性だけが社長面接に残っていたのだ。
S社長は、愛人候補になりそうな女性を近くにおいておきたいということなのか…。
だが、それらの女性の社長面接が終わると、今度はS社長から直接我々のところに連絡があった。
「みんな、綺麗で感じの良い人ばかりだったね。ただ、秘書経験者がいないんだよなあ。そういう人は応募しなかったの?」
「いえ、応募はあったのですが、人事の方で不採用になってしまって…」
「どうして?」
「我々の方では、社長との相性を考えて決めたとしか聞いていませんが…」
「あいつら…!」S社長の舌打ちが聞こえた。「不採用になった秘書経験者の方で、もう1度チャンスがあると言ったら、再応募してくれる人はいるかな?私の方で書類を見ますから」
「分かりました。あたってみます」
しばらくして、選考が再開し、今度はキャリア的に順当な候補者が内定となった。
S社長は、我々に対して率直すぎるほど明け透けに、何が起きたのかを我々に語ってくれた。やはり、採用部門は「秘書=社長の愛人」と思い込んで、面接をしていたのだ。
「社員たちが、ひどい勘違いをしてしまって、本当に不徳のいたすところです」
S社長は「秘書=愛人」などとは、これっぽっちも思っていないとのことだった。社長の弁明はこうだ。
「今まで秘書と愛人関係になったことはあります。それは否定しませんよ。それが原因で離婚せざるを得なくなったくらいだし。けれど、そうなったのは、これまで2人だけ。もう1人は独身の時なんだから、愛人と言われること事態おかしいでしょう?他の社員に社内恋愛禁止と言っているわけでもないし…」
S社長の愚痴はこの後もしばらく続いたが、我々にはひとつ気になっていることがあった。最終的に採用になったKさん(31歳)も、かなりの美貌の持ち主なのだ。
「入社が決まったKさんも綺麗な方ですよね」
我々がそれとなく水を向けると、社長はまんざらでもなさそうに嬉しそうな声を出した。
「いや、本当に。彼女も訳の分からない理由で人事が落としたそうだね」
「そうですね。ただ、Kさんは家庭のある身なので、社長も忘れないで下さいね」
軽い冗談のつもりだったが、社長の次の言葉はまったく真剣なものだった。
「家庭があろうがなかろうが関係ないよ。Kさんを選んだのは、あくまでキャリア。けれど、私と彼女がこれからどうなるかを確約することは出来ないな。恋愛っていうのは、常にそういうものだからね」
愛人候補の採用でなくてホッとしていたのだが、果たしてS社長とA社人事どちらが正しかったのか…。今では少し自信のない我々なのである。
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