Vertex社は、フェーズ3「ADVANCE」の結果を基に、今年の第2四半期中には承認申請にこぎつけたい考えだが、対抗するメルクもボセプレビルの今年中の承認申請に動いている。
両社は企業規模、知名度には格段の差があり、なおかつメルクはシェリング・プラウ買収により、現在C型肝炎の標準治療薬となっているPEG-IFNを有するなど、現時点ではメルクの優勢は揺るがないとみられている。
ただ、Vertex社もギリアッド・サイエンシズのHIV治療薬営業のシニア・ディレクターだったJoe Cozzolino氏とメルクの感染症部門グローバル新製品リーダーだったPaul Daruwala氏を、営業戦略管理担当の副社長としてハンティングしたほか、C型肝炎治療薬を有する他企業の営業要員の引き抜きも積極的に行い、攻勢を強めている。
小規模のVertex社には有利な側面も存在する。現在、アメリカでは推定約300万人のC型肝炎ウイルスキャリアがおり、診断確定者が約100万人、うち未治療患者は30~35万人いるとされている。このうち、肝臓専門医、消化器専門医約3300人による薬剤処方が、C型肝炎患者全体の治療薬処方の80%を占めているという。自身もメルク出身のVertex社最高営業責任者のSusan Wysenski氏は「我々は上市に向けた注力をすべきターゲットがどこにいるかは確実に把握している」と強い自信をのぞかせる。
また、現状では診断が確定したC型肝炎患者のうち実際の治療にまで至るケースは8~10%と言われており、既存治療のウイルス陰性化が高くないことがその背景として指摘されているが、Wysenski氏は「75%というウイルス陰性化率は希望を生み出す。この数字は医師と患者の双方が治療を受けるに足ると判断できるものである」と強調している。
一方、Bernstein ResearchのアナリストGeoffrey Porges氏も「高いウイルス陰性化率と深刻な新規副作用が認められないということを考えれば、テラプレビルは初のHCV特異的プロテアーゼ阻害薬として、遅くとも2011年後期までに承認を取得できるだろう」との見通しを示す。同時にBernstein Researchは2011年のアメリカ市場でのテラプレビルの売上高を最高で5億8200万ドルと予想している。
(The Pink Sheet 5月31日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから