TIA急性期にアスピリン+クロピドグレルの併用は有用か?
公開日時 2010/05/18 04:01
非心原性TIAの脳梗塞発症予防において、発症早期では、アスピリン+クロピドグレルをはじめとした抗血小板薬の併用療法を考慮してもよいのではないか――。慶應義塾大神経内科・脳血管障害予防医学講座准教授の星野晴彦氏は4月17日に開かれた合同シンポジウム「一過性脳虚血発作(TIA)の新展開と治療」でTIAの急性期治療における自身の考えを示した。
脳卒中治療ガイドライン(GL)2009では、非心原性TIAの脳梗塞発症予防について、アスピリン75~150mg/日、クロピドグレル75mg/日がグレードAで、シロスタゾール200mg/日、チクロピジン200mg/日がグレードBで推奨されている。これは、脳梗塞慢性期の治療における推奨グレードと同様だが、星野氏は、発症機序が同様であるため、TIAの治療は「脳梗塞慢性期治療をいかに早く、有効に行うかということ」と説明した。
一方で、抗血小板薬の併用療法は、出血性合併症の増加が懸念されることから推奨に至っていない。星野氏は、アスピリン+クロピドグレルの有効性について、「MATCH」、「CHARISMA」の2試験のサブ解析結果から、発症から治療開始までが短期間であるほど、併用による脳・心血管イベント発症抑制効果が高いとした。また、「FASTER」試験では、アスピリン+クロピドグレルの投与により、有意差はないものの、アスピリン単独投与に比べ、脳梗塞の再発率を約30%低下させたことも紹介し、急性期の併用療法の有効性を強調した。
懸念される出血性合併症の増加については、症候性頸動脈狭窄患者を対象にした「CARESS」試験の結果から、アスピリン+クロピドグレル投与群とアスピリン投与群で急性期での発症率に差がみられなかったとした。
シロスタゾールと他の抗血小板薬との併用については、効果発現まで短時間であることが期待されるとしたが、「単独・併用療法の効果の検討はまだ不十分」とした。
星野氏は、これらのエビデンスから、「(抗血小板薬の)併用療法を考慮してもよいと考えられる」との考えを表明。ただし、併用の組み合わせや、併用期間についてはエビデンスが十分でないことも指摘した。
そのほか、同院の治療実績から、TIAの急性期に対しても、急性期脳梗塞治療で推奨されている抗凝固薬・アルガトロバンや、抗血小板薬のオザグレルを投与されている症例が多いとし、GLと実臨床との間に隔たりがあることも報告した。
◎心原性TIAには発症早期のヘパリン投与が有用
心原性TIAの治療については、「GLには記載されていない」と断った上で、発症直後からのへパリン投与が有効とした。急性期脳梗塞患者では、頭蓋内出血が増加することが指摘されているが、TIAでは梗塞巣がなく、出血リスクが低いとの考えを示した。
TIAの急性期(発症48時間以内)の再発防止には病態を問わずにアスピリン160~300mg/日投与のみがグレードAで推奨されているが、心原性TIAについてはヘパリン投与の有効性が高いとし、「全例にアスピリンを投与する必要はなく,病態に沿った治療法を選択すべき」と述べた。