引き継ぎ期間なんて要らない
公開日時 2010/04/13 04:00
Sさんは転職に際し、自分には引き継ぎ期間など必要ないと豪語していた…。
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明日から別の仕事をしろと言われて、「今日中に引き継ぎが出来る」と言い切れる人は、どのくらいいるだろう?
医薬品販売A社の営業のSさん(32歳)は、内定後の引き継ぎにどのくらい時間が必要か問われ、堂々とこう言い放った。
「いつ仕事から離れることになっても大丈夫なように、パソコンも、ファイルも、業務日誌も準備してあります。私にしてみれば、そうなっているのは当然のことですよ」
Sさんの考えはこうだ。
「いつ何時、何があるか分からないじゃないですか。新型インフルエンザにかかる、交通事故にあう、犯罪に巻き込まれる、そんな可能性は常にあります。自分が突然いなくなったとしても、クライアントへの負担は最小限にしなければなりませんし、自分と同等の知識・スキルを持った後任が入れば、支障なく仕事が出来なければならない。そのくらいの用意をしておくのは、組織で働くビジネスパーソンとして、最低限の義務じゃないでしょうか」
Sさんはさらに、自分の回りで仕事がデキる人は、みな同じように自分の身の回りを処していると力説した。
現職でかなりの実績を残しているSさんは、「引き継ぎを必要としない」ことに強いプライドを持っているようで、
「自分の仕事をまとめておけないなんて、どうかしているでしょう?」
と続けた。
「それはSさんが凄いんだと思いますよ。普通の人には、なかなか真似できないことです」
と、我々はSさんを素直に尊敬した。
こんなSさんだったので、内定になった医薬品メーカーB社が「3週間後、来月アタマでどうでしょう?」と入社日を打診してきても、即答で「問題ありません」と応じることが出来た。実際、Sさんは指定の入社日に転職を果たしたのだが、B社で働く彼のところには、A社からのたびたびメール・電話がかかってきて、Sさんは今、対応に苦慮している。
「引き継ぎは不要」とまで言い切っていたのに、いったい何があったのか?
話の顛末(てんまつ)は、Sさんからお礼の挨拶をもらったときに明らかになった。
最後の出社日、SさんはA社で別れのスピーチをおこなった。9年間の思い出を語るSさんの声に、隣の課の庶務担当は、周囲が心配するほどハラハラと涙を流した。その様子を不審に思ったのが、Sさんが周囲に秘密にしていたガールフレンドだった。
彼女は、その庶務の女性を会議室に呼び出し、「もしかして彼とつきあっていたの?」と問い詰めた。庶務の女性は単に泣き上戸なだけだったのだが、この話は会社中に知れわたることになり、さらに2人、Sさんの秘密のガールフレンドがカミングアウトするきっかけになったのだった。
「だから、それはちが…。キミを騙すつもりなんてあるわけないじゃないか」
B社オフィスビルのある一角では、昼休みに携帯に向かって渋い顔をするSさんの姿がしばしば目撃されているとか…。
引き継ぎというと、仕事の引き継ぎだけと思いがちだが、人間関係でも挨拶やけじめを忘れてはならないということなのだろう。
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