健康オタクのKさん、内定になったA社で思わぬ事態が待ち受けていた。

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セールスエンジニア（技術営業）Kさん（30歳）のレジュメには、趣味の欄に「健康」の2文字があった。

「母は長年病気をわずらっていましたし、父方の親戚に夭折した人が多くて、食卓の話題は病気のことが中心という家庭で育ちました。その影響で、私は人一倍、健康に気を使っています。毎朝の運動を欠かさず、週末はストレス解消、食品だけでなく洋服にも自然素材にこだわっているんです」

体に良いと言われることは、何でもするというほどの健康オタクであることを自慢にしていたKさん。にもかかわらず、メーカーA社への転職のために受けた健康診断の結果は「再検査」であった。

「まさか、こんな…。でも、ここ1週間は現職の仕事の引き継ぎもあって、少し無理をしたところがあったので、疲れが出たのかも知れません。きっと大した問題ではありませんよ。そうであるはずがない…」
この時ですらKさんは動揺を隠しきれない様子だったのだが、再検査から数日後、 A社から「より精密な、人間ドッグを受けて欲しい」という連絡が入ってしまった。

「きっと、なにか悪いところがあったんですね。そうとしか考えられない。父親からの遺伝で何か病気があるのかも…」
Kさんは、もはや心ここに在らずといった狼狽ぶりをみせたが、実はA社側の単純ミスだった。

社則が改訂され、キャリア採用者全員に人間ドックを行うよう定められたということを、採用担当者がうっかりKさんに伝え忘れていたのだ。
「落ち着いてください。検査で悪いところが見つかったわけではないんです。A社の連絡ミスなんですよ」
実際、2度目の健康診断の結果は「問題なし」。我々とA社双方からの呼びかけで、Kさんはどうにか平静を取りもどし、人間ドックを受けることになった。結果は健康オタクの面目躍如、全項目で完全な正常値。
こうしてKさんのA社転職が決まったのだが…。

A社では、入社前、新しく採用した従業員の家族を会社に招待することが恒例になっていた。
「ここがあなたの息子さんが働く会社」「お父さんが働く職場こんなところですよ」と披露して、仕事への理解を深め、家族にも会社との一体感を持ってもらうのが目的だ。この粋なはからいは、採用された人たちのあいだで好評だったのだが、Kさんのケースでは話が別の方向に進むことになった。

Kさんの両親・フィアンセが招待を受け、A社を訪問。その後、我々は、なかば取り乱したKさんから電話をもらうことになった。

「人間ドックの結果が出た直後に、A社に家族が呼ばれたんです。そして、家族だけが別室に呼ばれて…。きっと、私のカラダのことで何か話があったはずなんですが、何を聞いても『そんな話はなかった』って…。エージェントさんが何か聞いているなら、教えてください。覚悟はできていますから。たとえ余命いくばくもなくても、私の体のことなんです。自分が知らなくちゃおかしいじゃないですか！お願いします！検査の結果はどうだったんですか？」

我々から家族の招待が恒例であることを伝え、A社からもKさんに何度も事情を説明したにも関わらず、Kさんは納得しきれず自費でもう一度人間ドッグを受けたとか受けないとか。
心配のしすぎで、体調を崩さないでほしいとおうもう我々なのであった。