速報:米医療改革法案 60票確保で民主党が強行採決、修正条項が上院通過
公開日時 2009/12/22 04:00
記録的な大雪に降りこめられたワシントンDCで、週末返上、連日長時間の審議を続けていた米上院。全米が注目するなか、日曜日の真夜中過ぎ、21日(月)午前1時に医療改革法案の修正案を60対40で可決した。これによりクリスマス休暇前に上院の法案採決が行われる見通しが濃厚に。各メディアも法案成立への「歴史的な第一歩」と報じた。
しかし、「最終法案」の成立には、さらに下院を通過した法案とのすり合わせが必要となるため、オバマ大統領の希望であった「年内に上下両院で可決、大統領が署名」というスケジュールは希望可能性が低いとみるべきか。
徹夜も辞さない勢いで行われた連日の審議。投票に先立つ土曜日には、審議不十分を申したて続けてきた共和党の要請により383ページにわたる修正条項(案)を上院の審議の場で1行残らず読み上げるという念の入れよう。
民主党も初めから一枚岩の団結ではなく、たとえば中絶費用の公費負担に対する反対は党内でもきわめて根強かった。とくに反対の急先鋒であったネブラスカ州選出のベン・ネルソンBen Nelson議員がはたして法案支持にまわるか否か、最後まであやぶまれていた。
そのため、18日(金)に民主党の院内総務はじめ複数の議員がネルソン議員とひざ詰めで協議し、ネルソンの最終的な支持を取り付けた。ネルソン議員の協力確保で民主党は支持票60票をかためたため、満を持して日曜深夜の採決強行に臨んだとみられる。
採決直前の与野党それぞれの院内総務のスピーチでは、共和党のミッチ・マコネルMitch MacConnell議員は依然として繰り返し「審議不十分」を強調。法案が成立すれば、中間層の税負担も医療保険料も大幅に値上がりすると批判し、長期にわたって多額の連邦予算を必要とする政策を実施することは国の将来を危うくするとつよく主張。「まだ遅くない。この国の将来のために、慎重な投票を!」と結ばれたコメントは悲痛な響きさえともなっていた。
対する民主党は、あくまでも一般論に終始したマコネルのコメントとは対照的。「世界最先端の医療技術を誇るアメリカでありながら、その恩恵を受けることもできない無保険者が10分に一人の割で命を落としている」と語り出したハリー・リードHarry Reid議員は、続けて、多数の無保険者の実名をあげてのエピソードを満載したスピーチで聴く者すべての情に訴え、これ以上国民が命を落とすのを見たくない、すべての国民が医療保険を持てる政策の実現を!と語り、法案支持を訴えた。
法案支持派は上院での最終投票をクリスマス前に終え、引き続き、下院を通過した法案との調整・統合を開始したい構えである。
(メディカル・ジャーナリスト 西村由美子)