中医協薬価部会 業界案に「医師は製薬企業1人勝ちと見てる」
公開日時 2009/09/24 04:02
特許期間中の新薬の薬価改定を特許切れ後まで猶予する新制度「薬価維持特例」の導入を柱とする業界の薬価制度改革案(以下、業界案)。中医協薬価専門部会は業界案の基本骨格や各論を議論した上で導入の是非を判断する方針だが、日本医師会は導入の必要性を議論してから各論の議論に入るべきと一貫して異を唱えていた。「新制度導入が既定路線ではないか」との不信や、医療費配分に影響するとの危機感からだ。このような中で9月18日の薬価専門部会で日医は、遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)に押される形で部会の方針にしぶしぶ了承したが、新制度の導入は困難とのスタンスに全く変更はない。
地域医療の崩壊が進んでいるにもかかわらず、維持特例によって新たな医療財源が発生する―― こういった理由で維持特例導入に強い難色と不快感を示す中川俊男委員(日本医師会常任理事)。10年4月の診療報酬改定の財源確保も絡む。この日の部会でも、維持特例導入の必要性の議論をすべきと訴えた。さらに、業界側がこの日、「維持特例の試行的実施」にも踏み込んだことから、「非常に問題だ」と穏やかではなかった。
それに対し、遠藤部会長が前回の部会に引き続き、「業界案の議論を全体的にしながら、維持特例を入れるかどうかを判断するのが適切な運営の仕方だ」との考えを改めて示し、中川委員も「納得はしないが了解する」と応じることとなった。ただ、中川委員は、「(維持特例には)全国の医療関係者、特に医師全員が注目している。(医師は)製薬企業1人勝ちの概念で固定している」と業界にくぎを刺すことも忘れなかった。
一方、部会終了後に会見した厚生労働省保険局の磯部総一郎薬剤管理官は、維持特例の導入について、「部会長も話されたように、既定路線では全くない」と強調。その上で、業界案の取り扱いに関し、10年4月の診療報酬改定のスケジュールを踏まえて、「12月中旬には何らかの結論を出さないといけない。10~11月にかけて議論の場を作りたい」と述べた。
専門部会が業界案の是非や維持特例の実施を決める際の判断基準については、▽特許期間中に研究開発投資をできるだけ早く回収・再投資するとともに、特許切れ後はジェネリックに置き換わる米欧市場と類似した制度が、日本でも適切かどうか▽限られた医療費の中で適切な制度かどうか▽未承認薬・未承認適応(ドラッグ・ラグ)の解消――などが軸になるとの見方を示した。