KYOTO HEART試験 バルサルタンの上乗せで脳卒中発症を有意に抑制
公開日時 2009/09/02 16:30
日本人のハイリスク高血圧患者に対し、従来の治療にARBのバルサルタンを上乗せすると、心血管イベントと脳卒中の発症リスクを有意に抑制することが分かった。京都府立医科大大学院循環器内科学の松原弘明氏が、1日に開かれたHOTLINEセッションで、「KYOTO HEART」試験の結果を報告する中で明らかにした。(1日スペイン バルセロナ発 望月英梨)
試験は、日本人のハイリスク高血圧患者に、従来の降圧治療に加え、ARBのバルサルタンを上乗せすることの有用性を検討するのが目的。対象は、糖尿病や喫煙、冠動脈疾患の既往など心血管リスクファクターを1つ以上合併する日本人高血圧患者3031人。▽バルサルタン上乗せ群1517人▽非ARB投与群 1514人-に分け、治療効果をPROBE法で検討した。
主要評価項目には、脳卒中・心筋梗塞の発症や再発を含む複合心血管イベント。平均追跡期間は、3.27年。試験期間は、04年1月~07年6月。
■バルサルタン上乗せで発症リスクを45%抑制
その結果、主要評価項目の心血管イベントは、バルサルタン群で83症例(5.4%)だったのに対し、非ARB投与群で155症例(10.2%)。上乗せにより、有意に45%発症リスクを抑制した。また、これまでの大規模臨床試験で明確なベネフィットが分かっていなかった脳卒中の発症・再発を45%有意に抑制し、注目を集めた。
なお、血圧は両群ともにベースライン時の157/88mmHgから133/76mmHgまで低下した。
結果を報告した松原氏は、バルサルタンの有効性を強調。血圧の低下に2群間で差がないことから、血圧を越えた効果がある可能性も示唆した。その上で、「この試験結果は、欧州や米国よりもアジアの日常診療にベネフィットがある情報を提供する」と述べた。
試験結果は同日付けの「European Heart Journal」に掲載された。