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内向型人間はMRに向かないのか

公開日時 2012/01/13 04:00

イーピーエス株式会社
榎戸 誠

 

内向型営業パースンの仕事術

『内向型営業マンの売り方にはコツがある――ムリに自分を変えないほうがうまくいく!』(渡瀬謙著、大和出版)は、「自分は内向型人間なので、営業に向かない」と思い込んでいるMRやMRを目指している人間にとって救いの書となることだろう。

著者は、内向型人間には5つの隠れたメリットがあると言う――①言葉数が少ないので、嘘をつく人間と見られない、②態度が穏やかなので、真面目な人間と見做される、③押しが強くないので、警戒されにくい、④聴くことに慣れているので、相手が話しやすい、⑤黙っているだけで、思慮深い人間と思われる。

極度の口下手、人見知り、あがり症の著者が、営業の強者揃いのリクルートで全国トップの成績を上げた体験を基に編み出した営業の具体的な方法が述べられている。営業ステップを①アポ取り=マーケティング→②訪問=リサーチ前半→③ヒアリング=リサーチ後半→④商品説明=プレゼンテーション→⑤クロージング=セールス――に細分化し、①~④の段階では営業(セールス)を一切意識するな、⑤の段階で初めて営業を行えというのだ。こう考えるだけで、内向型営業パースンは随分と気持ちが楽になり、ストレスが激減するだろう。

クロージングが苦手というMRには、①ドクターの「使わない理由」に先ず同意する→②ドクターの意見に反論するのではなく視点を変える(本質を伝える)→③その本質の裏付けをする(資料などを使う)→④さらに事例を見せる(成功イメージを与える)→⑤最後はドクターに決めてもらう――という必勝パターンが役に立つだろう。その際、標的ドクターの「使わない理由」を想定し、それを解決する手立てを時間をかけて事前に準備しておくことが最重要ポイントとなる。

この営業ステップを身に付けることによって、確実に5つの効果が得られる、と著者は述べている――①冷たく断られるストレスから解放される、②比較的簡単にドクターと打ち解けられる、③延々と話し続ける苦痛がなくなる、④強引な説得や駆け引きをする必要がなくなる、⑤自分に無理を強いずに実績を上げられるようになる。

「これからは、『内気な性格』が武器になる!」、「無理に自分を外向的な性格に変えないほうがうまくいく!」というのが、この本の結論である。

 

私のライヴァルたち

三共(現・第一三共)における20年に亘るMR時代、開業医担当の時も大学・基幹病院担当の時も、私自身は一貫して明るく元気な外向型MRであったが、私の周りで好実績を上げているMRには、なぜか内向型MRが多かったのである。
これは社内に限らず、ライヴァル企業のMRにも言えることだ。そこで、不思議に思った私は、その謎を解こうと、かなり熱心に調べたことがある。

そこで明らかになったのは、内向型MRは、自分の発言は極力抑えて、ドクターの話をじっくり聴いているということであった。それ以降、マシンガン・トークを控えて、ドクターの話をできるだけ聴くように努めたが、あまり改善できなかったというのが正直なところだ(笑)。

 

内向型MRの成功例

私の面接を突破して入社してきたMR未経験者たちの中にも、それと分かる内向型人間が多く含まれていた。

中でも印象的なのが、M君、T君、A君である。

当時26歳のM君は、証券会社の営業出身であるが、必要最小限のこと以外は口にせず、いつもニコニコしていた。MR活動を始めたものの、直属の上司と馬が合わず、突然、「今月末で退職したい」と携帯電話がかかってきた時は、温厚な彼のことだから、よほど思い詰めた結果の行動に違いないと判断し、直ちに彼の担当エリアまで新幹線で飛んでいった。そして、3年の契約期間終了後、優秀な成績と人間性が評価されて、派遣先の製薬企業の正社員として転籍したが、現在は大学担当MRとして活躍している。

当時35歳のT君は、自動包装機の営業出身であるが、どんな場面でも出しゃばることはなく、折り目正しく、周囲に気配りを忘れない優しい性格であった。MRになりたての時は、「自分はMRに向いていないのではないか」と相当悩んでいたが、ひとたびコツを掴んでからは、持ち前の粘り強いMR活動で好成績を維持し続けた。現在は、転籍した大手外資系製薬企業の大学担当MRとして、妻子を大切にしながら、イキイキと仕事に取り組んでいる。

当時33歳のA君は、エネルギー専門商社の営業出身であるが、いかにも朴訥な地方出身者という感じで、必要なことだけを短く言うタイプであった。MR認定試験には楽々合格するレヴェルと見做していたが、なぜか1科目を落としてしまった。最初の1年間は、MRとこれまでの仕事は大分勝手が違うと伸び悩んでいたが、その後はあれよあれよと言う間に、実績を大きく伸ばし続け、業務受託先の製薬企業の支店のMR全員の中でNo.1になってしまったのである。A君には契約期間中からヘッド・ハンティングの誘いがいくつも寄せられたが、「社長にはMRになるチャンスを与えてもらった恩がある。また。途中で抜けて業務受託先の製薬企業に迷惑をかけたくない」と、4年間、我が社に貢献してくれた。現在は大手外資系製薬企業のエリア担当MRとして、ここでもトップ・クラスの実績を上げている。

 

 

 

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