【秋アレリポート】産業医大・山﨑氏 FP/SM-DKからBUD/FM-THへの切り替えで自覚症状、呼吸機能が改善
公開日時 2011/11/24 06:00
産業医科大学呼吸器内科の山﨑 啓氏は、吸入ステロイド薬/長時間作用型β2刺激薬の配合剤(ICS/LABA)であるフルチカゾン/サルメテロール-ディスカス(FP/SM-DK)による治療で喘息症状が残存する症例では、ICS/LABAのブデゾニド/ホルモテロール-タービュへイラー(BUD/FM-TH)への切り替えで自覚症状や呼吸機能が改善する可能性が示唆されたとの見解を表明した。第61回日本アレルギー学会秋季学術集会のミニシンポジウム「気管支喘息 吸入療法1」で11月11日、報告した。
山﨑氏らは、FP/SM-DKを4週間以上投与し、喘息症状が残存する症例をBUD/FM-THに切り替えて8週間投与し、効果を検討した。対象は、FP/SM-DKを250μgあるいは500μgを1日2回、4週間以上投与されているにもかかわらず、喘息症状が残存している20歳以上の外来患者74例とした。喘息症状の残存基準は、喘息コントロールテスト(ACT)により25点、Asthma Control Questionnaire5(ACQ5)により0点を満たさないこととした。BUD/FM-THの吸入量は、FP/SM-DK 250μgを1日2回投与していた症例では1日4吸入、FP/SM-DK 500μgを1日2回投与していた症例では1日8吸入とした。
主要評価項目は、ACT、ACQ、呼吸機能検査で、切り替え前(0週)、切り替え後4週および8週での効果を検討した。なお、ACTは25点満点の1ヶ月間の喘息自覚症状のアンケートで、25点で完全なコントロール、20点以上でコントロール良好とされる。一方、ACQ5は1週間の喘息自覚症状のアンケートで、平均値で0点が正常、0.75未満でコントロール良好とされている。
患者背景は、JGL2009における治療ステップ3が82.4%(61例)、治療ステップ4が17.6%(13例)。対象患者のうちアトピー素因有りが54.1%(40例)で、合併症はアレルギー性鼻炎28.4%(21例)、慢性副鼻腔炎が17.6%(13例)、アトピー性皮膚炎6.8%(5例)であった。
他の喘息治療薬の併用状況(重複あり)は、ロイコトリエン受容体拮抗薬55.4%(41例)、テオフィリン徐放製剤29.7%(22例)、経口ステロイド薬が6.8%(5例)、ヒスタミンH1受容体拮抗薬が6.8%(5例)、去痰薬が24.3%(18例)であった。
◎新たな副作用も報告されず
BUD/FM-THへの変更後、主要評価項目の自覚症状について、 ACTは、切り替え前と比べ、4週間後、8週間後で有意に改善し(p<0.01)、平均値はいずれもコントロール良好とされる20点を超えていた。これはBUD/FM-THを1日4吸入群と1日8吸入群に分けても同様の結果となった。
また、ACQ5も4週間後、8週間後ともに有意に低下し(p<0.01)、平均値はコントロール良好の指標とされる0.75未満となっていた。BUD/FM-TH 1日4吸入群、1日8吸入群に分けても同様の傾向を示した。
全体では、呼吸機能検査での肺活量、努力肺活量、1秒量、1秒率、ピークフロー値はいずれも切り替えから4週以降で有意に改善していた。
BUD/FM-TH 1日4吸入群では、4週以降に努力肺活量とピークフロー値は有意な改善が認められ、その他の呼吸機能検査値についても、有意差はみられないものの一貫して改善傾向がみられた。また、BUD/FM-TH 1日8吸入群では4週以降でいずれの呼吸機能検査値も有意に改善した。
安全性においては、FP/SM-DK からBUD/FM-TH切り替え後に動悸、嗄声、頻脈などの臨床上問題となる副作用が新たに生じた症例はなかった。
山﨑氏は、FP/SM-DKによる治療を行っていてもACTやACQにより喘息症状が残存する症例に対しては、BUD/FM-THへの切り替えにより、自覚症状および呼吸機能が改善し、より良い喘息コントロールを達成できる可能性を示唆した。