抗がん剤・オプジーボ AST・ALT異常値の患者に誤投与で死亡例 神戸市立医療センター中央市民病院
公開日時 2025/03/06 04:50
神戸市は3月5日、神戸市立医療センター中央市民病院で医療事故による死亡事案が発生したと発表した。術後の再発抑制を目的として免疫チェックポイント阻害薬・オプジーボ(一般名:ニボルマブ)を投与されていた尿管がんの70歳代男性に対し、AST・ALTが中止基準を超えていたものの、誤って投与を継続。患者は肝障害を起こし、死亡した。
◎中止基準超の肝機能値 医師は肝障害への対応を失念 薬剤師は気づけず
発表によると、患者は昨年、腹腔鏡による腎尿管・リンパ節を摘出する手術を受けた。しかし、摘出した組織の顕微鏡検査にて、再発のリスクが高いと判断され昨年12月に再発予防を目的としてオプジーボの投与を開始。2週間後の投与時の採血検査で、AST・ALTが異常値となった。主治医は投与基準を超えた検査結果に気付いていたものの、同時に生じた腎臓・甲状腺に対する障害の対応をしたところで肝障害についての対応を失念し、投与の指示を出した。監査の役割を担う薬剤師においても処方内容と血液検査を確認したが、気付けなかった。
このため、本来投与を中止すべき患者に対して、オプジーボを投与。今年1月に、オプジーボの投与のため外来受診した患者が体調不良を訴えたことから、検査を行ったところ、採血検査にて肝酵素の著明な上昇を確認。肝機能の障害が疑われ、緊急入院したことで医療事故が発覚した。患者はその後、臓器障害の改善の見込みがなくなり緩和的治療へ移行し、死亡した。
オプジーボの添付文書には重要な基本的注意として、「劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること」と明記されている。投与前に毎回血液検査を実施し、減量・中止基準値ではないことを確認する運用となっていた。
同院では再発防止策として、監査体制を強化するなどの取組みを行ったほか、化学療法を実施する医師への再教育や電子カルテ上の検査結果表示のアラート機能強化、化学療法の実施時間帯の分散化など検討しているという。