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近畿大・細野教授 放射性リガンド療法に用いる放射性同位元素、輸入依存で「供給体制が脆弱」

公開日時 2024/07/17 04:51
近畿大学医学部放射線医学教室の細野眞教授は7月16日、ノバルティス ファーマ主催の放射性リガンド療法(RLT)に関するメディアセミナーで講演した。RLTは世界で「新たな治療モダリティとして注目を浴びている」ものの、日本ではRLTを取り巻く課題は少なくないと指摘。核医学を正しく理解することの重要さを訴えたほか、RLTに用いる放射性同位元素は「全量を輸入に依存している」と言い、「供給体制が脆弱で、(RLTを)うまく患者に届けられない場合もある」と問題提起した。

◎低すぎる薬価で「買い負ける」

供給体制の脆弱性に関しては、薬価問題もあると指摘した。1990年に承認され、甲状腺がんなどに対するRLTとして使われているヨウ化ナトリウム131I(一般名、放射性同位元素:ヨウ素-131)を引き合いに、「放射性ヨウ素131は薬価が安くて困る。製造原価を賄えない問題がある」と話し、薬価の引上げを求めた。細野教授はセミナー後、本誌取材に、放射性ヨウ素131は世界の原子炉で製造されているが、原子炉の老朽化やメンテナンスにより稼働台数が減る場合、放射性ヨウ素131は世界で取り合いになり、その際に日本の低すぎる薬価では「買い負けることがある」と述べた。

細野教授は日本のRLTにおける課題として、▽放射線に関する規制の複雑さ、規制を順守するノウハウの蓄積、▽放射性同位元素の供給体制の脆弱性、▽放射線治療病室の不足、▽適切な放射線管理に要するコストに比べ不十分な診療報酬、▽放射線に関する科学技術・社会リテラシーの不足――の5つを列挙。「核医学治療における諸課題はさまざまあるが、まずは放射線に関する情報を正しく理解することが重要」と強調した。

RLTは、がん細胞に結合するがん標的分子「リガンド」、放射線を照射する「放射性同位元素」、リガンドと放射性同位元素を結合する「リンカー」で構成される放射性医薬品(放射性リガンド)を使用した治療法で、がんに対する新しい核医学治療のこと。

08年以降に登場した放射性医薬品はいずれも静脈内投与で使用され、がん細胞表面に発現している抗原にリガンドが選択的に結合。結合した放射性医薬品は細胞外から、あるいは細胞内に取り込まれた後、放射性同位元素から照射される放射線により、がん細胞を傷害する。全身療法のため病変部位を問わず有効性が期待でき、正常細胞への影響が少ないといった特長がある。

その一方で、医療従事者や他の患者らの被ばくを抑える措置が必要で、放射線防護の観点から放射線治療病室または特別措置病室(適切な防護措置・汚染防止措置等を講じた一般病室)が必要となる。

なお、日本で承認済みの治療用放射性医薬品は24年3月現在、ヨウ化ナトリウム131Iのほか、イットリウム90Y イブリツモマブ チウキセタン(適応症:低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、承認年:08年)、塩化ラジウム223Ra(骨転移のある前立腺がん、16年)、ルテチウムオキソドトレオチド177Lu(神経内分泌腫瘍、21年)、3-ヨードベンジルグアニジン131I(褐色細胞腫、パラガングリオーマ、21年)――の5製品がある。
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