製薬協・上野会長 薬価制度改革の検証「積極的に参加」を表明 国主導の効果検証に業界から材料提供も
公開日時 2023/12/22 04:51
日本製薬工業協会の上野裕明会長は12月21日、大阪市内で開催した理事会後、記者会見に臨み、24年度薬価制度改革について、「ドラッグ・ラグ/ロスを解消するための重要な一歩を生み出すもの」と評価した。上野会長自身が意見陳述した中医協薬価専門部会で、各側委員から改革項目の速やかな検証が求められたことに触れ、「製薬協も積極的に参加していく」と応じ、「我々がどういう材料を整えられるか、整えるべきかで関係省庁と議論したい」と語った。長期収載品の選定療養については、「特許期間が切れた後は、速やかに後発品にその役割を譲っていくという流れ」と述べながらも、「後発品の安定供給があってのモデルだと思う。従って我々も後発品が安定供給される仕組み作りを注視しなくてはいけない」と指摘した。
◎上野会長「これは最初のステップ。更なる制度改革を訴えてまいりたい」
上野会長は会見冒頭で、「革新的な新薬の適切な評価を推進するための措置がなされた」と強調した。その上で、「日本が(世界に対し)患者さんへの新薬のアクセスを改善、可能にするイノベーション立国に変貌を遂げる。(今回の改革は)その始まりに位置づけられたものと受け止めている」と強調した。また、「これは最初のステップだと思っている」と指摘。「継続的な制度改革が重要だ。薬価制度だけでなく、特に薬事制度の改革も重要だ。これらを合わせて更なる制度改革を我々も訴えてまいりたい」と述べ、改革論議の次なるステージを見据えた。
◎改革項目の検証 日本への研究開発の進捗状況「多分早い段階から見ることができる」
一方で中医協薬価専門部会の議論で各側からドラッグ・ラグ/ロスの効果検証が求められたことに触れ、「恐らく実際の(効果検証の)調査は国が主体となってやると思っている」と述べ、製薬協として協力する姿勢を表明した。一方で上野会長は、「日本に対する研究開発が従前に比べて進んでいるか否かは、もう少し早い段階からも多分見ることができるだろう」と中医協の指摘に応じ、「いろんな観点から、これについての効果を見ることができるだろう」として、「今後、厚労省を中心に関係省庁とその方法については協議していくと思っている」と述べた。
◎長期収載品の選定療養「我々も後発品が安定供給されるような仕組み作りを注視する」
長期収載品に依存しないビジネスモデルへの転換について上野会長は、「一般論として、新薬創出を標榜する新薬企業は革新的な新薬を一つでも多くより早く出すことを第一義にやっていく」と強調。長期収載品の選定療養が導入されることについて、「基本的に特許期間中はしっかり医薬品として供給する。一方、特許期間が切れた後には、速やかに後発品に役割を譲っていくという流れ。後発品も安定供給というところがあって初めてそのモデルが成り立つ」と述べ、「我々もその後発品が安定供給されるような仕組み作りも注視していかなくてはいけないと思っている」と述べた。
◎木下理事長 新薬創出等加算「2010年の試行導入より進んだ部分もある」
このほか木下賢志理事長は会見で、今回の新薬創出等加算の見直しについて、「プラス・マイナスあるが、現行の問題を改正するということからすると、非常に良いイノベーションを評価する方向に変わったと思う」と評価した。木下理事長は新薬創出・適応外薬解消等促進加算が試行導入された2010年当時、厚労省医政局経済課長を務めていた。木下理事長は今回の見直しについて、「試行導入した2010年当時の新薬創出等加算に近づけてほしい、戻してほしいという言い方で企業要件を撤廃してほしい主張してきた」と振り返り、今回の見直しについて一定程度の方向性が示されたことを評価した。一方で、「(今回の見直しで)乖離幅を超えた品目は外れるが、ただエントリーはできる。つまり1回外れたら外れっぱなしでなく、さらに乖離幅が縮まれば次回は戻る。その意味で2010年より進んだ部分もある」とも強調した。