提供:ヤフー株式会社
デジタル技術の進展により、製薬企業においても患者中心のビジネスモデルが志向されるなか、患者が症状や疾患を認識して、どのように考え、行動するかというペイシェントジャーニーへの理解が必須となっている。こうした流れを受けて国内最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフー株式会社は、日々蓄積される膨大な検索データなどを活用して生活者の行動傾向を分析・レポートするサービスを展開し、医療・製薬領域での実績を積み上げている。6月29日に行われた製薬業界向けのヤフー・データソリューションセミナー「ビッグデータから読み解くペイシェントジャーニー」の講演内容から、検索データを用いたソリューションの全体像や特徴、そして期待される成果などについて紹介する。
社会の関心、困りごとを映す
ヤフーの検索データ
「ヤフーの検索データは、世の中の関心ごとや困りごと、ニーズを映すのに非常に相性のいいデータです」と、同セミナーで演者を務めたヤフー株式会社データソリューション事業部の新庄匠氏は指摘する。例えば、新型コロナウイルス陽性者数と『コロナ ワクチン』などの検索ワードは、陽性者数が増えると検索数も増加するという正の相関を示す。反対に『ヘアスタイル』などは、陽性者数が増えるほど検索数が減るという逆相関の検索ワードだ。『肩こり 頭痛』『なか卯 持ち帰り』など感染者数の推移から“2週間ずれて”正相関となる検索ワードもある。つまり、陽性者が増えるに伴い、「気になること」や「急いでする必要のないこと」、そして感染が続くことによる身体の変調や行動様式の変化などが一目瞭然となるのである。
「検索データを読み解くことで、人々の行動やニーズの変化を捉えることができますし、想像では気づきにくい新たなブームや課題を実データから読み取ることが可能です。さらに直接的な影響だけでなく、二次的・三次的間接影響もデータに表れ、把握できます。これらがヤフーの持っているデータの強みと考えています」と新庄氏は説明する。
同社では、この検索データを含めたビッグデータを使って患者の行動やニーズを分析するソリューションを製薬業界に浸透させていきたい考えだ。デジタル技術の進歩によって患者との距離が縮まり、製薬企業が患者の治療継続を支援するなどの動きが活発化しているものの、そうした支援を適切に実践していくためには、ペイシェントジャーニーの正確な分析が不可欠である。「製薬業界では、例えばアンケート調査など従来のリサーチ手法では得られないような患者インサイトを獲得したい。また、その結果をもとに、どのようなコミュニケーションをとるべきか、患者さんは何に悩んでいて、そこにどういうメッセージを届けていくべきかといった新たな課題が生じています。われわれが持つさまざまなデータの活用でそうした課題解決のサポートをしていきたいと考えています」(新庄氏)
具体的には、ヤフー上にある膨大なデータを解析して、検索行動や閲覧サイトの分析を行い、特定の疾患患者と推測される方の行動やニーズを統計化・可視化するというソリューションである。なお、データ分析にあたっては、ヤフーのユーザー個人が特定できないように統計データとして処理したものをレポートする仕組みだ。
検索行動から患者を推定・抽出し
時系列で行動パターンを把握
では検索データを使ったペイシェントジャーニー分析はどのように行うのか。最初のアプローチは、検索データなどから特定の疾患患者と推定されるユーザー群を抽出。そのうえで抽出されたユーザー群が時系列ごとにどういうパターンで検索行動を行っているのかを可視化する。最後に検索後にアクセスした閲覧サイトの情報を加味して最終的にペイシェントジャーニーを分析・作成するという手順だ。
「1点目の抽出については、症状や治療法などかなり細かくキーワードを選定しています。このキーワードを検索している人たちは該当する疾患の患者さんではないかと推定していくわけです。ーワードの回数によって条件設定も可能になっており、頻度が多いものを確度が高いと判定するなどの調整もできます」(新庄氏)。実際には、キーワードや回数の設定は製薬企業とのディスカッションで決めていくというアプローチをとっている。
抽出されたユーザー群の時系列ごとの検索パターンについては、あるキーワードを起点にしてその前後でどういったワードが検索されているのかを分析する。「病院」をキーワードにした場合、患者が病院を検索する前に何を悩んでいたのか、また「疾患名」がキーワードである場合は、その疾患名にたどり着く前にどのようなワードを検索していたのかが把握できるのである。
「あるキーワードを起点にすると、症状や医薬品、保険保障などのワードがどれくらいの頻度や時間差で検索されているのかを可視化します。そのうえでよりパターンを鮮明にするためにカテゴライズしていきます」と新庄氏は説明する。例えば、病院名の検索の前に症状の検索をする人、病名の後に最終的に病院を検索している人などさまざまなパターンのパーセンテージを出すかたちで、患者の行動を分類していくというイメージだ。
加えて、検索後の閲覧サイトのチェックは、患者がどういった情報にさらされているかを知るうえでも重要な情報源となる。これらを総合的に分析してデータアナリストが特定疾患における患者の行動パターンを詳細に分析し、製薬企業に対してレポーティングしていくというサービスである。なお、サービスの名称は「DS.ANALYSIS」で、官公庁や自治体、他業種など多岐にわたる業界においてカスタマー分析等で活用されているが、最もオーダーが多いのは医療・製薬業界だという。
アンケートの回答に比べて
潜在ニーズを浮き彫りにする
図は、「肺がん」検索者の前後検索を抽出して期間(横軸)と関連度(縦軸)に応じて配置したもの。関連度とはイコール重複率で、高いほど上に表示される。これをみると「肺がん」検索前の左側には、「痰に血が混じる」などの自覚症状、また検索後の右側には「腫瘍マーカー」「保険適用」や薬剤名など専門的なキーワードが増えていくことがわかる。
「何か身体に変調があるときに、いきなり受診するという行動はなかなかとりづらく、医療機関に行く前にまずはネットで調べたいという人が少なくありません。そういう観点からも、かなりデータが集まるプラットフォームであると自負しています」と新庄氏は話す。より正確にペイシェントジャーニーを分析していくために、最低でも数千単位のサンプル数を収集しており、Yahoo! JAPAN IDによって検索者の性別や年齢などのセグメントも可能となっている。
もっとも、特定の患者を推定するために設定したキーワードは、患者だけでなく、医療従事者も検索することが多いため、エムスリーや学会のサイト閲覧など医療従事者が取りそうな検索行動パターンから特定し、ユーザー群から除外するというきめ細かな作業も行っている。違う見方をしたら、医療従事者と思われるユーザーも推測できるため、例えば医師の行動分析を行うことも可能であり、実際にそのようなオーダーもあるそうだ。
そのほか、疾患によっては病院を検索した患者と、病院をまったく検索していない患者に切り分けて、2つのユーザー群にどういう特徴があるかを比較するという分析も可能である。医療機関を受診せずにセルフメディケーションで治そうとする患者の特性を調べるには有効であろう。また、先ほどの数千単位のサンプル数が確保できれば、希少性疾患についても分析できるという。
「今までのアンケートの質問に対して回答を得るということではなく、普段の検索行動をベースに分析するという観点において患者さんの潜在ニーズを拾いやすい。患者インサイトの理解という点で新しい一歩になりうると考えています」と新庄氏は展望する。まずは「検索して調べてみる」という行動が根づいている今の時代だからこそ、製薬企業とヤフーデータの掛け合わせにより、新たなビジネスモデル、価値を生み出す可能性が無限に広がっているということだ。
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