経済財政諮問会議・未来投資会議 全世代型社会保障改革で議論スタート
公開日時 2018/10/09 03:51
政府の経済財政諮問会議と未来投資会議が10月5日、首相官邸でそれぞれ開催された。第4次安倍改造内閣が発足して初めての会合。ともに安倍政権の最重要課題として「全世代型社会保障制度の構築」に向けて取り組む方針を確認した。諮問会議に臨時議員として出席した根本匠厚労相は、2019年10月の消費税率引き上げで2025年を念頭とした社会保障・税一体改革が完了すると説明。これからは2040年を見据え、①多様な就労・社会参加、②健康寿命の延伸(生活習慣病の重症化予防等)、③医療・福祉のサービス改革(ロボット、AI、ICT等の実用化推進とデータヘルス改革)―などの政策課題に取り組む考えを表明した。
◎糖尿病腎症重症化予防の埼玉方式など全国展開へ
諮問会議で民間議員は、「全世代型社会保障制度の構築」について、予防・健康づくりの推進を提案した。糖尿病腎症重症化予防にかかる埼玉方式や、特定健診・特定保健指導事業の医師会モデルを含む生活習慣病・認知症対策について、先進・優良事例の全国展開を実現すべきというもの。
具体的には、健康増進等のインセンティブの仕組みとして、ポイント制度の導入促進や、自治体ごとに包括的・広域的な民間委託の仕組みを導入するなど、多様なPPP/PFIの活用を推進すべきとした。さらに、認知症対策では、予防モデルの構築に向けて、官民をあげて取り組む重点プロジェクトとし、その中長期の事業規模、民間資金受入れの仕組みを具体化するなどを提案している。
医療費や介護費用の地域間でのバラつきに対しては、「インセンティブ改革や見える化等の手法を活用し、供給構造の効率化を進める必要がある」と指摘。病床過剰地域におけるダウンサイジング支援に向けて、民間病院などの誘因になる効果的な追加方策を検討すべきとした。さらにインセンティブの仕組みについては、財源の規模とレバレッジ効果、実施時期を明らかにし、効果の高い手法を講ずべきとしている。
◎後発品 外皮用薬、中枢神経用薬は重点施策を
後発品についても触れ、2020年9月までの数量シェア80%の実現に向け、選定済みの9の重点地域、医療扶助、国保・後期高齢者保険、外皮用薬での使用推進や一般名処方の促進に重点的に取り組む。なお、9つの重点地域とは、後発品の使用割合の低い徳島県、山梨県、高知県、大阪府に加え、人口や処方量の多い神奈川県、京都府、福岡県、愛知県、広島県の9地域。
なお、この日の諮問会議で民間議員は、薬効分類別にみた後発品使用割合(2017年度)を紹介。全体平均の73.0%に対し、消化器官用薬(83.6%)、循環器官用薬(74.1%)、血液・体液用薬(87.7%)、呼吸器官用薬(76.0%)が平均を上回ったのに対し、中枢神経用薬(64.0%)、外皮用薬(43.5%)、その他の代謝性医薬品(69.7%)がそれぞれ下回っているとし、対応を求めた。
◎産構審「2050経済社会構造部会」の政策提言を紹介 世耕経産相
未来投資会議では世耕弘成経産相から政策提言が示された。経産省は産業構造審議会に「2050経済社会構造部会」を設置し、9月21日から議論を開始している。世耕経産相は初回の議論を踏まえた当座の政策提言を披露し、保険者によるヘルスケアポイント導入を促進し、ウェアラブル端末等を活用して個人の予防・健康づくりを支援することを紹介した。このほか、①がん検診等の通知に、個々人の健康リスクを見える化し、健康受診率を向上、②健康スコアリングレポートにより従業員の健康状態を見える化し、経営者の予防・健康づくりを促進、③投資家による健康経営へのシグナル(健康経営銘柄への投資促進)、④保険者による生活習慣病や認知症予防のインセンティブ強化―などの予防・健康づくり支援をあげている。
内閣官房日本経済再生総合事務局は「成長戦略の方向性・案」を提示。SDGsに向けたSociety5.0の実現(第4次産業革命)、全世代型社会保障改革、地方施策の強化-のそれぞれについて、3年間の工程表を含む実行計画を2019年夏に決定するとした。
次世代ヘルスケアの取組目標としては、オンライン診療の保険適用となる診療科を見直すほか、服薬指導も含めたオンラインでのサービスの実現を掲げている。また、複数の医療法人・社会福祉法人の合併・経営統合、共同出資による新たな法人の設立、グループ化・運営の共同化の検討も盛り込んでいる。