厚労省・中山薬剤管理官 敷地内薬局はチェーン薬局上回る厳格な評価視野 「医薬分業の理念に逆行」
公開日時 2017/08/01 03:51
厚生労働省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は7月30日に都内で開かれた一般社団法人日本女性薬局経営者の会(JLIPA)で講演し、2018年度診療報酬改定に向けて、病院など医療機関と保険薬局が同一敷地内にある、敷地内薬局(門内薬局)の調剤基本料について、大手調剤チェーンを超える引下げといった厳格な評価を行う考えを明らかにした。中山薬剤管理官は、「医薬分業を行うことと、理想的には地域包括ケアという地域単位の中で面的な分業を行う我々の方向性から真っ向から逆行する」と指摘。「進んでしまうのであれば、調剤基本料3(月4万回超の処方箋枚数で集中率が高い薬局などの基本料を引下げ)よりさらに厳しい評価を作るしかない」と述べた。
敷地内薬局は、患者の利便性向上などの観点から、規制改革会議が薬局の構造上の独立性について規制緩和を求め、2016年10月1日から制度として運用されている。一方で、調剤報酬上は現在、敷地内薬局は明確な定義はなく、処方せん回数や集中率などから門前薬局と同等に扱われている。
中山薬剤管理官は、運用上の見直しが、「どんどん保険薬局が門内に入っていっている」と実態を指摘。大学病院が敷地内に医療モールを構築し、そこに保険薬局を誘致している現状があることを問題視した。医薬分業は、保険医療機関と保険薬局の一体的な構造・一体的な経営ではないことが大原則だが、それを揺るがすと指摘。敷地内薬局は院内調剤と同等という指摘があることも踏まえた評価の在り方を検討する考えを示した。
◎医薬品の適正使用推進「かかりつけ薬剤師の成果示す指標に」 病診薬連携は情報共有がカギ
薬剤師・薬局の診療報酬上の評価について、薬剤費の伸びが医療費の伸びを進めることが指摘される中で、診療報酬・介護報酬同時改定となる2018年度改定に向けて、「費用と効果が見合わないという評価がされるとそこから切り込まれていくのは間違いない。医薬分業が定着してきた中で、薬剤師・薬局の医療への貢献度を示せるかというのに差し掛かってきている」と危機感を示した。
その上で、超高齢社会が到来する2025年に向けて、地域包括ケアシステムを構築する重要性が高まる中で、それに合致した薬局・薬剤師像を明確に打ち出す必要性を強調。「地域ごとの医療機関に通ったとしても、かかりつけ薬剤師をもって一元的・継続的な薬の管理を担う構造を目指す。調剤報酬上も評価をしたいし、施策を打っていきたい」と述べた。
高齢化が進み、複数の疾患を合併する患者が増加する中で、多剤投与(ポリファーマシー)や重複投薬の課題が深刻化する中で、「医薬品の適正使用の推進は、ますます薬剤師の貢献が期待される領域と考えられる」と指摘。「かかりつけ薬剤師・薬局の推進による服薬情報の一元的・継続的把握の成果を示すことができるわかりやすい指標になるのではないか」と述べた。
今後は、薬局を含めた地域での“病診薬連携”の重要性を強調。検査値や入退院時の服薬指導などの情報を共有化することで、抗がん剤の服薬指導や服薬の継続などをうながし、医療に貢献する姿を描いた。中山薬剤管理官は、「円滑な地域包括ケアを実施する視点で貢献する医療機関、薬局との間で情報共有ができることが重要。双方向の情報共有の仕組みができることが一つ大事なことになるのではないか。そういう評価ができればいいと思っている」と述べた。また、長期処方が増加する中で、16年度改定で導入された分割調剤を推進する考えを表明。分割調剤を活用し、残薬を確認することで地域の患者からの信頼を得る姿を描いた。
◎調剤料は切り込みも「合理的な点数のつけ方だと言い切るのは難しい」 管理業務へシフト促す
一方で、調剤料については16年度改定で、15日以上の処方について引下げが行われたがさらなる切り込みが行われる可能性についても言及。調剤料は処方日数に応じて段階的に点数が増加するが、調剤のオートメーション化も進み、薬局・薬剤師の手間も軽減する中で、「本当にこの点数が妥当なのかと問われると、非常に合理的な点数のつけ方だと言い切るのは難しい」との考えを表明。一方で、すべての患者から取得する点数だけに、「非常に影響としては大きいので長期的な将来を見据えながら、少しずつ見直していくしかない」と述べた。現行の調剤報酬上の評価は、調剤などいわゆる薬を中心とした、いわゆる対物業務の比重が高いが、これを処方のチェックや服薬指導、在宅訪問指導など、いわゆる対人業務へとシフトすることの必要性を強調。「患者中心の管理業務に移行させていくということを意識して考えていく」と述べた。
そのほか、基準調剤加算はかかりつけ薬剤師指導料が新設されたのに伴って、要件が見直されたことから、「その流れに沿ってこの流れは基本的には維持していくべきだろう」と述べた。ただ、薬局にも個人経営から大手調剤チェーンまで経営規模や経営方針も様々であることから一律な評価の難しさも指摘した。