厚労省の中医協・総会は5月17日、新薬8製品(8成分18品目)を薬価収載することを決めた。同省は5月24日の収載を予定する。再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する経口薬ニンラーロ(武田薬品)などが収載されることになった。オピオイド誘発性便秘症治療薬スインプロイク(塩野義製薬)に対しては、新規作用であることや有効性の高さから有用性加算II(10%)を認めた。
収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)
▽インチュニブ錠1mg、同3mg(グアンファシン塩酸塩、塩野義製薬)
薬効分類:117 精神神経用剤(内用薬)
効能・効果:「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」
薬価:
1mg1錠 412.20円
3mg1錠 544.30円
(1日薬価:562.30円)※1日薬価は、国内長期投与試験における維持投与量の平均値を基に算出。
市場予測(ピーク時6年後):投与患者数4.2万人、販売金額63億円
加算なし
シナプスに存在する受容体を介してノルアドレナリン作動性神経を活性化することで症状を改善する非中枢神経刺激薬。1日1回投与。体重50kg未満の小児は1日1mg、50kg以上では1日2mgから投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、体重で規定された維持用量まで増量する。シャイアー・ジャパンと共同販促する。
既承認薬には中枢刺激薬のコンサータ、非中枢刺激薬のストラテラがある。
▽スインプロイク錠0.2mg(一般名:ナルデメジントシル酸塩、塩野義製薬)
薬効分類:235 下痢、浣腸剤(内用薬)
効能・効果:「オピオイド誘発性便秘症」
薬価:0.2mg1錠 272.10円(1日薬価:272.10円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数18万人、販売金額26億円
有用性加算II(A=10%):加算理由「対症療法として用いられている既存の緩下薬と異なる作用機序を有しており、オピオイド誘発性便秘症の発症原因である、末梢性μ オピオイド受容体へのオピオイドの作用を直接阻害することで便秘症状を緩和する。臨床試験において、定時緩下薬で効果不十分な患者を含め、一定以上の便秘症状を有するオピオイド誘発性便秘症患者に対して有効性が認められている」
オピオイド鎮痛薬の鎮痛作用を減弱させることなく、末梢のμオピオイド受容体に結合し、オピオイド鎮痛薬の作用に拮抗することで、副作用である便秘症状を緩和する。用法・用量は、通常、成人には1回0.2mgを1日1回投与。
オピオイド鎮痛薬はがん疼痛治療をはじめとする中等度から高度の疼痛管理に用いられるが、その作用機序から、便秘症を引き起こす。
▽ニンラーロカプセル2.3mg、同3mg、同4mg(イキサゾミブクエン酸エステル、武田薬品)
薬効分類:429 その他腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:「再発又は難治性の多発性骨髄腫」
薬価:
2.3mg1カプセル 9万6519.00円
3mg1カプセル 12万3355.60円
4mg1カプセル 16万0886.00円
(1日薬価:1万7237.80円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数2.2千人、販売金額164億円
加算なし
経口プロテアソーム阻害薬。免疫調節薬レナリドミド、副腎皮質ホルモン製剤デキサメタゾンの各経口薬と併用して用いる。ニンラーロの承認により、プロテアソーム阻害薬を含むすべて経口の3剤併用療法が可能となる。類薬にはベルケイドやカイプロリスなどがある。
▽ムンデシンカプセル100mg(フォロデシン塩酸塩、ムンディファーマ)
薬効分類:429 その他腫瘍用薬(内用薬)
効能・効果:「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」
薬価:100mg1カプセル 2617.60円(1日薬価:1万5705.60円)
※1日薬価は、比較薬の承認用法の8回投与の価格に対して、本剤の臨床試験での平均投与日数を適用し算出。
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数335人、販売金額7.2億円
加算なし
選択的にリンパ球の増殖を抑制する新規のPNP(Purine Nucleoside Phosphorylase、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ)阻害薬。低分子化合物。類似の効能・効果を持つ薬剤としてポテリジオ点滴静注やアドセトリス点滴静注がある。
▽ナルラピド錠1mg、同錠2mg、同錠4mg
▽ナルサス錠2mg、同錠6mg、同錠12mg、同錠24mg
(一般名:ヒドロモルフォン塩酸塩、第一三共プロファーマ)
薬効分類:811 あへんアルカロイド系麻薬(内用薬)
効能・効果:「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」
薬価:
ナルラピド錠:
1mg1錠 110.60円
2mg1錠 202.80円
4mg1錠 371.90円
ナルサス錠:
2mg1錠 202.80円
6mg1錠 530.20円
12mg1錠 972.20円
24mg1錠 1782.80円(1日薬価:1782.80円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数11万人、販売金額44億円
両剤とも加算なし
両剤ともμオピオイド受容体作動薬。ナルラピド錠は即放性製剤、ナルサス錠は徐放性製剤。これらヒドロモルフォン製剤は海外で80年以上販売され、WHOのがん疼痛治療のためのガイドラインなどで疼痛管理の標準薬に位置付けられている。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が高いと判断された薬剤。
▽ステラーラ点滴静注130mg(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ)
薬効分類:399 他に分類されない代謝性医薬品(注射薬)
効能・効果:「中等症から重症の活動期クローン病の導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」
薬価:130mg26mL1瓶 18万9612円(1日薬価:6772円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数843人、販売金額4.3億円
加算なし
ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤。中等症から重症の活動期クローン病に対しては、導入療法の初回に、点滴静注製剤にて患者体重に応じた用量を単回点滴静注する。そして、点滴静注製剤を投与8週後に90mgを皮下投与し、以降は12週間隔で90mgを皮下投与して用いる。効果が減弱した場合は投与間隔を8週間に短縮できる。皮下注製剤はすでに市場にある。
▽ザルトラップ点滴静注100mg、同点滴静注200mg(アフリベルセプト ベータ(遺伝子組換え)、サノフィ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」
薬価:
100mg4mL1瓶 7万8614円
200mg8mL1瓶 15万3409円 (1日薬価:1万958円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数5.9千人、販売金額73億円
加算なし
腫瘍への血管新生を阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示すVEGF阻害薬。用法・用量は、イリノテカン塩酸塩水和物、レボホリナート及びフルオロウラシルとの併用において、通常、成人には2週間に1回、1回4mg/kg(体重)を60分かけて点滴静注する、というもの。患者の状態により適宜減量する。対象患者はオキサリプラチンを含む化学療法歴を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん患者。ヤクルト本社と共同販促する。
▽コムクロシャンプー0.05%(クロベタゾールプロピオン酸エステル、マルホ)
薬効分類:269 鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤(外用薬)
効能・効果:「頭部の尋常性乾癬」
薬価:0.05%1g 28.20円(1日薬価:56.40円)
市場予測(ピーク時7年後):投与患者数3.8万人、販売金額7.0億円
加算なし
有効成分はストロンゲストクラスのステロイド剤。1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水またはお湯で泡立てて洗い流す。同成分で他社からローション剤などの剤形の製品があるが、コムクロシャンプーはシャンプーのように用いることができることから、コンプライアンスの向上などを期待して開発された。