日医・横倉会長 アベノミクス後の賃金・物価動向に照らすと16年度改定は「低い水準」
公開日時 2017/04/27 03:50
日本医師会の横倉義武会長は4月26日の定例会見で、安倍政権が発足した2012年以降の経済指標のトレンドに照らすと、前回2016年度の診療報酬本体改定は、「賃金・物価動向に比べて低い水準に抑えられていた」と指摘した。さらに財務省が先週20日の財政審財政制度等分科会に1995年を起点とした「賃金・物価動向」の資料を提示したことについて、「指数の動向は、どこの年度を起点とすべきかで大きく変わる。提出された恣意的だと言わざるを得ない」と批判し、実態経済に合致した診療報酬改定の実施を求めた。
横倉会長は会見で、アベノミクス以降の賃金・物価動向と診療報酬本体の水準を提示した。2012年を100とした場合、賃金指数は102、消費者物価指数が104となるのに対し、診療報酬本体は101となり、診療報酬本体が低い水準に抑えられている。一方、財務省が財政審財政制度等分科会に示した1995年を100とした「賃金・物価動向」のトレンドをみると、診療報酬本体が110と高水準なのに対し、賃金指数は101、消費者物価指数は103。90年代後半以降のデフレ経済に伴う経済指標の伸びが抑制されているのに対し、診療報酬本体の伸びが高い水準を示すことになる。
横倉会長は、「賃金や物価動向指数まで下げろという意味合いにも読める」と述べ、この結果が、今後の議論をミスリードしかねないとの懸念を示すと同時に、診療報酬改定にマイナスの影響を及ぼしかねないとの危機感を示した。
その上で、「安倍政権をスタートとしたところを起点とすれば、アベノミクスで経済が回復しつつある。それに見合うような形でもいいのではないか」と主張した。「国民不安が高まるときほど、安心して老後を迎えるためにも社会保障を充実させることが必要だ。社会保障を充実させれば雇用の充実や拡大につながり、賃金の上昇をもたらす。国民の将来不安の解消につながる」と指摘。「国民が安心して医療や介護を受けられるよう、予算措置がなされるように要望していくことになる」と述べた。
一方で、具体的な診療報酬本体引上げについては、今秋に発表される「医療経済実態調査がある程度出てから、引上げの幅を判断する」とした。
◎医療は「全国一律の単価で推進すべき」
政府の経済財政諮問会議や財政審で都道府県の「保健ガバナンスの抜本強化」が提起されたことに触れ、「都道府県の権限整備と病床再編には課題が多い」との認識を表明した。その上で、「医療は社会全体で均一に維持されるもので、公共サービスでもある」と指摘。「社会共通試算として運営管理されるべきものだ。地域によって分け隔てなく、全国一律の単価で推進すべき」と述べた。
このほか新薬創出加算については、すでに日医として、公的医療保険による原資を活用せず、税制やAMEDの補助金の活用などを提案しているところ。削減された公的医療保険財源も「有効活用すべき」との考えを示している。横倉会長は、日医の提案を実現にすることで、「質の高い国産製品が開発され、価格も低下し、公的医療保険財源の有効活用につながる」との考えを表明。現在の新薬創出加算の適応を受ける新薬の8割が外資系企業であることにも触れ、日本発の新薬を国際展開のためにも必要だとした。一方で、“ゼロベース”で見直すと、製薬企業の創薬に影響する可能性があることから、「徐々に引き下げていくことが必要ではないか」との考えも示した。