ノボ・ベック社長 GLP-1アナログ市場は週1回製剤で成長 「患者の利便性高い」
公開日時 2017/04/13 03:50
ノボ ノルディスク ファーマのオーレ ムルスコウ ベック社長は4月12日、東京都内で記者会見し、糖尿病治療薬のひとつであるGLP-1アナログ市場について、「市場成長が週1回製剤からきている」と述べ、15年9月からの週1回製剤の伸長が市場全体の成長につながっているとの認識を示した。GLP-1アナログ市場は16年に40%成長したという。そして、「日本の患者は自己注射をあまりしたがらないため、週1回製剤で利便性が高まっている」と分析し、患者や医師の受け入れが良いとの見方を示した。
ベック社長が指摘した15年9月には、週1回投与のGLP-1アナログ製剤として2番手のトルリシティ(製造販売元:日本イーライリリー、販売元:大日本住友製薬)が登場している。
同社はGLP-1アナログ製剤としてファーストインクラスの1日1回投与のビクトーザを10年6月から販売し、今年2月には週1回投与のGLP-1アナログ製剤のセマグルチド(一般名)を承認申請した。セマグルチドは順調に審査が進めば、年内承認の可能性がある。
会見に同席した杉井寛開発本部長は、GLP-1アナログ市場について、「長い目で見ると、利便性の面から、徐々に週1回製剤にシフトしていく可能性がある」と話した。すでに、週1回製剤の登場以降、ビクトーザの成長率は下がっているという。ただ、「ビクトーザとセマグルチドとの使い分けは可能だと考えている」とも述べ、例えば、合併症によって他剤を毎日服用している患者ではビクトーザの方が服薬コンプライアンスが良いと思われると説明した。セマグルチドの承認取得によって治療提案できる幅が広がることを示した格好だ。
セマグルチドの日本での開発プロジェクトには、2型糖尿病に対して1日1回経口投与で用いる「NN9924」(開発コード)がフェーズ3に、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対して1日1回投与の注射で用いる「NN9931」がフェーズ2にある。
■糖尿病患者の高齢化 ダイヤル大きくするなど高齢者向けに製品開発
ベック社長は、世界に比べて日本の糖尿病患者には高齢者が多いことから、「私たちの製品が高齢者に使われることを意識していかないといけない」と述べ、日本市場では高齢者向けの製品開発をしていく必要性を指摘した。ペン型注入器のダイヤルを大きくしたり、高齢になると親指の押す力が弱くなることから注入圧がそれほど必要ないデバイスの開発、または低血糖による転倒リスクの軽減に向け、「低血糖リスクが少ない製剤開発も大事だ」と語った。
■国内売上900億円突破
同社の日本の16年業績は売上908億円、前年比2.1%増だった。この売上は過去最高となる。売上の63%が糖尿病、10%が血友病、27%が成長ホルモンその他――。伸び率は糖尿病が3%増、血友病が8%増、成長ホルモンその他が1%減――。ベック社長は、持効型基礎インスリンのトレシーバ、トレシーバの成分と超速効型成分を配合したインスリン製剤ライゾデグ、GLP-1アナログのビクトーザ、血友病治療薬ノボエイトの売上が堅調に推移したことが業績に寄与したと説明した。