薬価毎年改定 “価格乖離の大きな品目”は金額ベースも視野に議論
公開日時 2017/02/09 03:52
中医協薬価専門部会は2月8日、“価格乖離の大きな品目”を薬価改定するための、中間年の薬価調査のあり方について検討を開始した。現在の薬価本調査は、薬価と市場実勢価格の乖離幅(率)を把握する目的で2年に1回実施されている。これに対し、中間年の薬価調査は、通常改定と異なる目的で実施される。中間年の対象品目は、新薬創出加算品目、長期収載品、後発医薬品など全品を調査する。調査の概要は今後詰めることになるが、現行の薬価本調査の枠組みについては踏襲する考えもある。一方、後発医薬品の数量シェアが80%に近づくに連れ、単品総価取引が実質的に増える懸念もあることから、製薬業界と厚労省は、単品単価の定義や未妥結減算についての議論に今後着手することになる見通しだ。
昨年12月に4大臣合意した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では、「現在2年に1回行われている薬価調査に加え、その間の年においても、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」ことが盛り込まれた。
通常、薬価改定の前年の秋に行われる薬価本調査では、薬価基準に収載された全医薬品について、規格ごとの市場実勢価格と薬価との乖離幅(率)、薬効群別の乖離率や後発医薬品の数量シェアを明らかにし、これに基づいた改定が行われている。これに対し、中間年に行う薬価改定は、乖離率に限らず、金額を含めた「価格乖離の大きな品目」に焦点をあてる方針だ。
価格乖離の大きな品目として、生活習慣病薬など類似品が市場に多数存在し、品目間で競争環境にある長期収載品や後発医薬品などがあがるが、仮に金額ベースであれば、乖離率が小さくても高額薬剤が該当する可能性がある。現行の新薬創出加算品目については薬価の引き下げが猶予されるため、このルールから除外されるが、4大臣合意した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度についてもゼロベースで抜本的に見直すと明示されており、今年5月以降の中医協での議論如何によっては、新ルールの対象品目に影響が出る可能性もあるところだ。
◎大西経済課長「国民負担軽減図る薬価改定、薬価調査を」
この日の中医協でも、診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「高額な薬剤に絞ってみて乖離が大きければ修正していくのがあるべき姿ではないか。安い品目で努力するよりも下がる可能性があるものを下げるのが、財政上一番大きい」と指摘。これに対し、厚労省医政局の大西友弘経済課長は、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針について、「国民負担の軽減を図る観点からというのが基本的な考え方」と説明。この理念に合致した薬価改定、薬価調査を制度設計する考えを示した。
調査対象については、2015年度の本調査の客体をみると、①日本医薬品卸売業連合会83社(1301客体)、②日本ジェネリック医薬品販社協会87社(144客体)、③直接販売しているメーカー営業所7社(76客体)、④それ以外の営業所4759客体――を対象にしている。これまでは医薬品卸側への負担が大きいことも指摘されていたが、ICTを活用した体制の整備の進んでおり、調査の負担軽減は進んでいるとの見方もある。
診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、塩崎厚労相が昨年12月7日の経済財政諮問会議に、四大卸で売上高の75%をカバーしているとのデータを提出したことを引き合いに、「中間年の調査は、四大卸を中心ということだろう。すべてを対象とすることには、正確性の観点から違和感がある。中間年の調査は、卸売業者も医療機関も薬局も極力負担が少ない簡便な方法でやるべきではないか。正確性にずれがあるのであれば、本改定で修正すればいい」と指摘。これに対し、大西経済課長は、調査客体や事前に公表することで、公正な取引に影響を及ぼす可能性があることや、価格を把握できない品目があると説明。「調査対象に漏れがあることも加味する必要がある。全体として簡素な調査にしたい」と述べた。一方で、病院や診療所、保険薬局などの購入サイドについては効率性の観点から見直す方針だ。
そのほか、調査の実施開始時期については、2019年10月に消費税増税が見込まれることから、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、中間年の調査が実質的にスタートするのは2021年であると想定した上で、「あまり拙速に議論する必要がない」と指摘した。ただ、厚労省内には2019年10月実施予定の消費税増税が再度先送りされるとの懸念もすでにあがっている。4大臣合意でも調査自体の見直しは今年中に結論を得るとされており、議論は早急に進める必要があるとの声もある。
◎費用対効果評価 制度化へ向け検討開始 今夏めどに中間とりまとめ
同日開かれた中医協費用対効果評価専門部会は、費用対効果評価の本格導入、制度化に向けて議論を開始することを了承した。昨年12月に4大臣で合意された薬価制度の抜本改革に向けた基本方針を踏まえたもの。対象品目や医療技術の選定のあり方、総合的評価(アプレイザル)等のあり方、費用対効果評価の反映方法などについて具体化に向けた議論を進め、今夏頃を目途に中間取りまとめを行う。
費用対効果評価は、2016年度診療報酬改定で試行的導入され、現在医薬品7品目、医療機器6品目を対象として分析が進められている。