スイッチOTC推進へ提言発表 ロードマップ早期策定や学会創設など 日本パブリックアフェアーズ協会
公開日時 2023/10/03 04:51
産官学民が連携して社会課題の議論や研究を行う「日本パブリックアフェアーズ協会」(代表理事:増田寛也日本郵政取締役兼代表執行役社長)は10月2日、スイッチOTC医薬品の推進を求める提言を発表した。提言では、ネット経由の医薬品個人輸入が今後増加し、正規品でない偽造医薬品を一般消費者が手にする被害が拡大する可能性を指摘。医療用医薬品のスイッチOTC化を促進することで正規品へのアクセスルートを拡充し、一般消費者を保護することが急務だと強調した。発表に合わせて開かれたフォーラムで、提言策定に携わった武藤正樹・衣笠病院グループ理事は、「今後、医師と薬剤師が協同して患者さんの治療に携わる医療が広がる中で、OTCの価値を見出していくべきことが重要だ」と語った。
提言は、①スイッチOTC医薬品ロードマップ委員会設置とKPIやロードマップの早期策定、②評価検討会議の運用を見直す、③個人の購入履歴が把握できるOTC医薬品データベースの構築、④セルフメディケーション税制と連動したOTC医薬品お薬手帳の作成、⑤日本OTC医薬品学会の創設―の5項目。武藤氏は、「国民のセルフメディケーション推進や健康寿命の延伸といった大局的な観点から政府はスイッチOTC化を積極的に進めるべきだ」と主張。その上で、「医師や薬剤師などステークホルダーが集まって、エビデンスの集積や議論、研究を行っていく必要がある」としての学会創設を呼び掛けた。
◎スイッチOTC化が進まない“スイッチラグ”を指摘 医薬品の個人輸入が増加する背景に
フォーラムでは、全医薬品に占めるOTCの割合が6.9%(金額ベース)にとどまることや、生活習慣病治療薬やED治療薬、性感染症検査薬など海外に比べてスイッチOTC化が進まない“スイッチラグ”などの課題を指摘。また、医薬品の個人輸入が横行し、泌尿器科系やダイエット名目などの偽造医薬品で健康被害が広がっている現状を報告した。広報や啓発に取り組む偽造医薬品等情報センターの西島正弘センター長は「個人輸入への認識が薄く、医薬品に関するリテラシー向上を図る必要がある」と懸念。日本OTC医薬品協会の磯部総一郎理事長は「品質が確保されたスイッチOTCという選択肢があるということが重要。偽造薬のリスクから守るという視点でも考えるべきだ」と訴えた。
◎「医師の負担軽減や国民皆保険制度の持続性確保につながる」飯島氏
パネルディスカッションではスイッチOTC化の利点について、医師や薬剤師らが議論。上田薬剤師会(長野県)の飯島裕也理事は、「スイッチOTCが進めば、薬剤師の重要性が増して薬局が地域住民のファーストアクセスの場となり、医師の負担軽減や国民皆保険制度の持続性確保につながる」と主張。徳島大大学院医歯薬学部研究部循環器内科学分野の佐田政隆教授は、「医師の働き方改革の対応のためにメディカルスタッフへのタスクシフトが進んでいる。薬剤師がOTCを活用して服薬指導をし、必要に応じて医師につなぐ医療の実現が重要だ」と期待を込めた。