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オプジーボの承認取得 原発不明がんを一つの疾患として社会に周知する契機に 小野薬品・BMSセミナーで

公開日時 2022/01/25 04:49
小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブは1月19日、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のオプジーボ(一般名:ニボルマブ)が原発不明がんに対する承認を取得したのに伴い、「原発不明がんに対する世界初の治療薬登場」と題してメディアセミナーを開催した。今回の承認取得は、近畿大学病院の主導の下、原発不明がんを対象にオプジーボを評価した医師主導治験(NivoCUP 試験)の結果に基づく。セミナーでは同大医学部内科学腫瘍内科部門の中川和彦主任教授が原発不明がんの病態や疫学、治療上の課題と今後の展望、オプジーボが治療薬として承認された意義などを講演し、「現実に原発不明がんという疾患が存在することをこの機会に知ってもらい、周知していただきたい」と訴えた。

◎原因は転移後の原発巣の消退?

原発不明がんとは、十分な検索にも関わらず原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍。固形がんの中で1~5%を占め、年間の罹患数は7000人と推定されている。
複数臓器に転移が認められる患者が全体の半数以上を占め、全生存期間(OS、中央値)は6~9か月、5年生存率は2~6%と極めて予後が悪いことが知られている。ただ、推定される原発巣に準じた治療により予後が改善するが、約8割は治療法が確立されていない予後不良の原発不明がんとなる。

転移先としてはリンパ節(42%)が最も多く、次いで肝臓(33%)、骨(29%)となっている。例えば、リンパ節に腫瘍が認められる場合、悪性リンパ腫を疑うが、病理学的に転移巣とすぐに判明するため、大学病院などでは血液内科から腫瘍内科に紹介され、原発巣を検索するが発見に至らず、原発不明がんとなるというケースが多い。

原発不明がん患者の死亡後の病理解剖をまとめた2007年の調査で原発巣と同定されたがん種は、肺がんが20%、すい臓がんが17%などだが、解剖してもなお3割が不明なままだ。原発巣が特定されない理由について中川氏は、「最も可能性のあるのは、原発巣が転移するまでは悪性度が強かったが、そのあと何らかの原因で原発巣は消退したのではないかとの考え方だ」との見方を表明。このほか、がんが発生しにくい小腸、虫垂などに原発巣がある場合、診断が難しいなどの理由があるとの考えを示した。

治療に際しては、たとえ原発巣が見つからなくても、臨床的に転移が強く疑われるがん種があれば、ガイドラインで推奨されている治療を迅速に開始することが重要になる。「原発不明がん診療ガイドラインでは原発不明がんでも1か月以内の治療開始を推奨している」と述べた。

一方で、原発巣がわからず予後不良群であった場合には、遺伝子プロファイリング検査の実施で特徴的な遺伝子変異がわかり、診断につながったケースもある。ただ、一般的な標準治療であるプラチナ併用化学療法が実施されるか、PSが悪い場合はベストサポーティブケア(BSC)が実施されてきた、こうしたなかで、オプジーボは予後不良な原発不明がんに対する初めて承認を取得した選択肢となる。

◎医師主導国内第2相試験 奏効率は既治療例において22.2%

承認の根拠となった医師主導国内第2相臨床試験(NivoCUP試験)では、原発不明がんで予後不良とされた患者52名(化学療法既治療例41名、未治療例11名)に対して、オプジーボ240mgを2週間ごとに点滴静注し、病勢進行または許容できない毒性発現まで継続投与した(最大52サイクル:約2年)。主要評価項目である奏効率(独立した中央判定によるCR(完全寛解)とPR(部分寛解)の割合)は、既治療例において22.2%で95%信頼区間の下限5%を上回り、有効性が証明された。未治療例と合わせた奏効率は21.4%だった。SD(安定)を含めた病勢制御率は全体で53.6%だった。

中川氏は、「半数近くの症例で腫瘍の縮小が認められるほか、SDと判定された人の中でも縮小しているケースが多い。加えてPR判定の方は奏功期間がかなり長くなる傾向にある」と分析した。

既治療例において、奏効に至るまでの期間(中央値)は1.53か月で、その後の奏功期間(中央値)は12.4か月、全生存期間(OS、中央値)は約16か月だった。中川氏は従来、OSが6~9か月と推計されていたことを引き合いに、「縮小効果だけでこの薬を評価するのは難しく、OSが延びた結果は非常に患者さんたちにとって朗報ではないかと思っている」との見解を示した。また、「他のがん種と同様に原発不明がんでも、できるだけ早い時期に治療したほうが生存期間を伸ばす効果が高くなるのではないか」との仮説を示した。

同剤が承認されたことで、「新たな研究や治療の開発への道を開いた。研究の対象にならないほど患者さんにとって不安で恐怖なことはないだけに、原発不明がんがひとつの疾患として社会に認知されることを願っている」と強調した。原発不明がんの場合、腫瘍内科がないような病院ではどこの診療科が担当するのか、患者がたらい回しにされることもあり、あらかじめ原発不明がんが疑われた場合の診療体制を確立していくことも今後の課題としてあげた。
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