健康・医療戦略推進本部 「アジア医薬品・医療機器規制調和グランドデザイン」実行戦略案 UHCを推進
公開日時 2020/07/15 04:51
政府の「健康・医療戦略推進本部」(本部長・安倍晋三首相)は7月14日、「アジア医薬品・医療機器規制調和グランドデザイン」の実行戦略案を提示した。臨床開発体制の充実では「がん領域」と「感染症領域」について、アジア域内で臨床試験実施拠点ネットワークを構築し、迅速かつ低コストの医薬品等の開発を実現する。さらに、アジア域内で規制調和を実現し、垣根のないマーケットを整備する。新型コロナ感染症COVID-19のアウトブレイクを受けて新興感染症に対する医薬品等の開発環境の整備が急務となっている。緊急時にも対応する医薬品等の協働体制を構築する狙いもある。このほか、日本が培ってきた「ユニバーサル・ヘルスケア・カバレッジ(UHC)」のアジア諸国における達成に貢献する考えも明示した。
実行戦略案には「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進の観点から」との副題がついている。医薬品等へのアクセス向上は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの一つ。 アジア諸国の臨床開発体制の充実・規制調和の推進を通じ、アジアにおける医薬品等へのアクセス向上と最新医療の提供による保健サービスの質の向上などを実現させる狙いが込められている。一方で、経済発展や人口増加等に伴い社会環境が大きく変容しているアジア諸国において、日本政府としても国際保健分野の貢献として、自らが気づき上げたUHCの経験をアジア諸国と共有し、UHC 達成に貢献したいとの狙いも込められている。
◎規制調和の推進 PMDAのアジア各国への専任担当者を配置
グランドデザインの実行戦略案では、優れた製品がアジア諸国に受け入れられ、迅速な患者への提供を目指す「規制調和の推進」として、PMDA国際部門の強化・再編とPMDAアジア医薬品・医療機器トレーニングセンターの拡充を盛り込んだ。すでに今年度からアジア優先国への専任担当者の配置を行うことになっている。さらに、アジア規制当局のリーダーが緊密に連携・調整を進めるため、アジア規制責任者で構成される「アジアンネットワーク会合」の開催も予定している。
こうした取り組みを通じ、アジア諸国の安全対策能力の向上と情報共有を支援。医療現場等からの報告機能の強化し、相手国との間で、産学官が連携した対応を検討する。さらにデータベースの品質確保や情報の収集・管理のルール整備の観点を含め、アジア域内でリアルワールドデータ(RWD)を活用していく枠組の構築に向けて主導的役割を果たす方針だ。
◎臨床試験実施拠点NWをアジア圏で構築へ
臨床試験実施拠点のネットワークをアジア圏で構築する。日本とアジア諸国が連携し、ICH-GCP準拠の臨床試験を実施するためのソフト面、ハード面の基盤を整備。研究拠点において臨床研究推進部門等の整備を行うことで ARO(Academic Research Organization)としての機能を持たせる。
◎NWの対象に「がん領域」「感染症領域」
ネットワークの対象となる疾患は「がん領域」と「感染症領域」をあげた。「がん領域」については、アジア各国において研究拠点病院を整備し、恒常的な仕組みとして臨床試験を実施するための体制整備を進める。日本における教育シラバス、手順書などを英訳して、現地の研究拠点の医師、リサーチナース、スタディコーデ ィネーター、臨床研究コーディネーター(CRC)への教育研修を実施する。
「感染症領域」では、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクを踏まえ、緊急時に機能する体制整備に向け、アジア諸国との協働体制をあらかじめ確立するとした。ソフト面の整備では、不足する人的機能・設備を 同定した上で、不足を解消する研修を、医療従事者及び治験・臨床研究関係 者向けに実施するとともに、必要に応じ国内製薬企業等の民間企業及び、相 手国の要請に基づき JICA や ADB からの支援を模索する。