岸田首相 途上国の医薬品等への公平アクセスで新たな円借款制度創設 エーザイのインパクト会計に言及
公開日時 2023/09/25 04:52
岸田首相は9月21日、米国ニューヨークで開かれた「G7保健フォローアップ・サイドイベント」と「UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)ハイレベル会合」に相次いで出席した。岸田首相は、将来の健康危機への「予防・備え・対応」(PPR)の強化とUHC達成に向けた日本政府の取り組みを強調。途上国がワクチン等の感染症危機対応医薬品等(MCM:Medical Countermeasures)に公平にアクセスできるようにするため、新たな円借款制度を創設すると発表した。同時に、インパクト投資を通じて民間資金動員を加速させるグローバルヘルスのためのイニシアティブ「トリプル・アイ」の立ち上げを宣言。実例として、エーザイが導入した「インパクト会計」に言及した。
「G7保健フォローアップ・サイドイベント」には岸田首相のほか、武見敬三厚労相、パーンプリー・パヒターヌコーン・タイ王国副首相兼外務大臣、テドロス・アダノムWHO事務局長、キャサリン・ラッセルUNICEF事務局長、ビル・ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長らが出席した。
◎「UHCへの我々の決意を再確認する絶好の機会だ」岸田首相
岸田首相はスピーチで、「日本はUHC達成に向けた議論を主導してきた。新型コロナから得た教訓を忘れる前に、国際社会は改めてUHCの達成という目標を思い起こし行動する時だ。本会合は、UHCへの我々の決意を再確認する絶好の機会だ」と強調した。なお、UHCとは、すべての人が、効果的で良質な保健医療サービスを、負担可能な費用で受けられることを指す。
岸田首相は今年5月のG7広島サミットに先だち、医学雑誌ランセットに「人間の安全保障とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:G7広島サミットに向けた日本のビジョン」と題する論文を寄稿している。この中で、健康危機に対する「予防・備え・対応」(PPR)の強化および保健システムの強靱化を通じたUHC達成の必要性を提唱している。世界に冠たる健康長寿を支える国民皆保険制度を有する日本だけに、岸田首相としても国際社会の中でリーダーシップを発揮したい考えだ。
◎「医薬品等が公平に行き渡ること、資金が円滑に動員されることが極めて重要」
岸田首相はスピーチの中で、「特に、ワクチン等の感染症危機対応医薬品等(MCM)が公平に行き渡ること、資金が円滑に動員されることが極めて重要だ」と述べ、続けて「MCMへの公平なアクセスには、研究開発、製造、ラスト・ワン・マイル・デリバリーまでの包括的な取り組みが重要だ。このためG7は公平性、包摂性等の基本的な考え方や原則を“G7広島ビジョン”として発表し、G20やWHO等と具体的な議論を行っている」と報告した。また、円滑な資金動員には、国際協力とともに、国内の資金動員、そして、民間資金動員の拡充・加速が必要とし、「日本の新しい円借款制度を創設する」と明らかにした。
新たな円借款制度とは、技術協力の提供と併せて、借入国による予防・備えの強化の取り組みに応じて支援を拡充したり、パンデミック発生時の対応に必要な資金を速やかに提供したりする仕組み。
◎グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ「トリプル・アイ」立ち上げ
なお、民間資金動員については、広島サミットで承認された、インパクト投資を通じて民間資金動員を加速させるグローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ「トリプル・アイ」を立ち上げる方針。岸田首相は、実例として「エーザイは国際保健におけるインパクト会計に取り組んでいる」と紹介しながら、「こういった先行例も見ていただきながら、各国企業・機関の皆様には、トリプル・アイへの更なる参画を呼びかけたいと思う」と期待感を表明した。