【World Topics】CESと大麻
公開日時 2020/01/14 04:50
賛否の議論がありながら「あえてダイバーシティを尊重する」意味でセクシャル製品の展示を容認したと発表したCES2020だが、もうひとつのデリケートな領域である医療用大麻については、従来積極的に展示を進めてきた方針を一転、理由を明らかにしないまま関連企業にプレッシャーをかけて展示を辞退させたとして批判されている。
実際、医療用マリファナ等を安全に保管・管理するデバイス+アプリ”Keep Smart Storage”で、CES2020のイノベーション・アワードを受賞(受賞決定は2019年10月)したKeep Lab社が、受賞後にCESの主催者であるCTAから、同社がCES会場に受賞製品を展示する場合には、会場に”cannabis”(大麻)という用語を表示してはならず、したがいディスプレイやパンフレットにも”cannabis”という用語を印刷・表示してはならず、会場での製品説明でもその用語を用いないこと、という厳重な指示を受け、製品のマーケティングができないため、やむなく展示への参加を諦めたという経緯があった。
https://www.ces.tech/Innovation-Awards/Honorees/2020/Honorees/K/KEEP-Smart-Storage.aspx
背景は昨秋から専門家・業界を中心に深刻な社会問題として注目され始めた原因不明の呼吸器疾患だ。地域性なく全米各地(29州)で350例を超える症例が報告され、CTCおよびFDAが調査に乗り出している。数例の死亡報告も出ているこれらのケースで、患者に共通しているのがマリファナ吸引。吸引器に使用されるビタミンEアセテートとして知られるビタミンE由来のオイルに混入した汚染物質が原因ではないかとされているが、まだ明らかではない。
公式見解は発表されていないが、CESの自主規制?はこうした動きが原因、というのが関係者の推測であり、理解である。だが、議論は、消費者向け製品の展示会であるはずのCESが、まだ規制にも至っていない、行政の「ちょっとした動き」に過敏に反応していきなり自主規制することの是非に及び、批判の声がおさまらない。
以前にCESで製品を展示して「注目を集め、好評であった」マリファナ吸引関連デバイス・メーカーのDaVinci創業者Cortney Smithは、「行政が動けば神経質にならざるをえないという気持ちはわかる。だが、一部の違法行為が問題視されたというだけで、合法的に行動している業界にいきなりCESがプレッシャーをかけたりするのはおかしい。消費者に“より質の高い商品を届ける”という観点からも、アワードをとった商品はきちんと展示させるべきではないか」と語っている。