酒田市病院機構(山形県酒田市)を中心とした地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」は6月17日までに、免疫疾患治療薬・インフリキシマブ(先発製品名:レミケード)のバイオシミラー製剤を地域フォーミュラリに追加することを決めた。このほか、骨粗鬆症治療薬・ビスホスホネート製剤についても追加する。実施は6月から。日本海ヘルスケアネットの取り組みは、全国初の地域フォーミュラリとして注目を集めている。
日本海ヘルスケアネットでは2018年から、「安全で、効果が確かめられていて、経済性がある薬剤による標準薬物治療」を地域で推進することを目的に、地域医師会と薬剤師会が強力にタッグを組み、地域フォーミュラリを策定。地域で推進してきた。18年11月に抗潰瘍薬・PPI、糖尿病治療薬・αグルコシダーゼ阻害薬を皮切りに、19年2月にARBとスタチンを策定するなど、範囲を拡大してきた。
◎ビスホスホネート製剤の第一推奨薬にアレンドロン酸Na35mg
19年6月から新たに地域フォーミュラリを定めたのは、バイオシミラー製剤・インフリキシマブ(推奨品:日本化薬)と、骨粗鬆症治療薬・ビスホスホネート製剤で、第一推奨薬をアレンドロン酸Na35mg(同・東和薬品、沢井製薬、日医工)、第二推奨薬をリセドロン酸Na17.5mg(同・東和薬品、ニプロ、富士フィルムファーマ)と決めた。なお、製造販売元である製薬企業の推奨は、「強制ではない」としている。
◎生物学的同等性試験や「原薬の産地」などをスコア化 総合的に検討
同地域で進められる地域フォーミュラリは、評価基準(クライテリア)として、①生物学的同等性試験、②原薬の産地、③一包化の安定性と利便性、④薬価、⑤錠剤印字――をスコア化。比較表を作成し、有効性・安全性、経済性、合理性を総合的に検討する。生物学的同等性試験について薬剤師が薬学的知見を発揮し評価するなどして、医薬品の薬物動態や品質、安全性を検討。医師の有する実処方の経験などを融合させ、地域で標準療法を創り上げる考えだ(
関連記事)。地域での処方量や、地域中核病院である酒田市病院機構の処方量や薬剤費を勘案して、策定領域を決めてきた。
薬剤費削減効果が注目を集めがちだが、「推奨品の浸透が標準薬物治療」となることで、地域における薬物治療の質向上を狙う。後発品80%時代が迫るなかで、保険薬局や医療機関での在庫管理にも寄与。将来的には、医薬品卸の頻回配送を減らすなど、業務軽減に貢献することも期待される。
【同地域でこれまでに策定された地域フォーミュラリの製品群】
▽PPI(18年11月より)
ランソプラゾール(15mg・30mg):武田テバ、東和薬品、沢井製薬
ラベプラゾール(10mg・20mg):サンド、日医工、キョーリンリメディオ
オメプラゾール(10mg・20mg):東和薬品、共和薬品(アメル)、日医工
▽αグルコシターゼ阻害剤(18年11月より)
ボグリボースOD(0.2mg、0.3mg):沢井製薬、東和薬品、高田製薬
ミグリトール(25mg・50mg・75mg):沢井製薬(OD)、東和薬品
▽アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤(ARB)(19年2月より)
テルミサルタン (第一推奨薬):三和化学、富士フィルムファーマ、日医工
オルメサルタン (第二推奨薬):東和薬品、エルメッド、三和化学
カンデサルタン (第三推奨薬):沢井製薬、日医工、MeijiSeikaファルマ
▽脂質異常症治療薬HMG-CoA還元酵素阻害剤(推奨薬群)(19年2月より)
ピタバスタチン (普通錠・OD錠):MeijiSeikaファルマ、東和薬品、沢井製薬
ロスバスタチン (普通錠・OD錠):沢井製薬、第一三共エスファ、共創未来(高C血症のみ)
▽バイオシミラー製剤(19年6月より)
インフリキシマブ:日本化薬
▽ビスホスホネート製剤(19年6月より)
アレンドロン酸Na35mg (第一推奨薬):東和薬品、沢井製薬、日医工
リセドロン酸Na17.5mg(第二推奨薬):東和薬品、ニプロ、富士フィルムファーマ