厚労省・社保審医療保険部会 「患者申出療養」法案化へ 次期通常国会に医療保険制度改革法案提出
公開日時 2014/11/10 03:52
厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は11月7日、次期通常国会に提出する医療保険制度改革関連法案に、国内未承認薬の使用など一部混合診療を認める“患者申出療養(仮称)”を盛り込むことで大筋合意した。実施に際しては、東大病院など全国15施設ある臨床研究中核病院が初めて実施する医療の国への申請や実績の報告、前例がある医療の場合は実施の可否の判断など、中心的な役割を担う。
患者申出療養は、安倍政権の掲げる成長戦略の一つに掲げられ、政府の規制改革会議が今年6月の答申で同制度の創設を盛り込んでいた。
患者申出療養の対象は、▽現在先進医療の対象にならないが、一定の安全性が確認された医療、▽現行の治験の対象とならない患者に対する治験薬の使用―を想定。先進医療の対象とならないケースは、①高齢者や病期の進んだ患者、合併症を有するなど、実施計画(適格基準)対象外の患者に対する療養、②一部の国内未承認・海外承認医薬品などの使用や実施計画が作成されていない技術など先進医療として実施されていない療養―としている。保険収載を目指すことが前提となる。
なお、インフォームド・コンセントの内容、手続きや、薬害・副作用発生時の対処法や責任の所在など、具体的な運用については、中医協で引き続き議論を行う。
◎初めて行う医療は申請後6週間以内に可否を判断
患者申出療養として初めて医療を実施する場合は、患者からの申し出を受け、臨床研究中核病院が実施計画、安全性・有効性などのエビデンス、患者申出起点を示す書類を添付して申請。国に設置された患者申出療養に関する会議での審議を経て、正式な実施が決まる。申請から実施の可否の判断までは、原則6週間。
患者からの申し出を受ける窓口は、臨床研究中核病院または特定機能病院が担う。医療の実施に際し、臨床研究中核病院は、窓口となった特定機能病院などを共同研究医療機関として申請できる。かかりつけ医は、患者から患者申出療養についての相談に応じ、有効性・安全性について理解、納得できるよう支援を行うほか、臨床研究中核拠点病院と連携して、医療を実施することも可能とした。
患者申出療養の対象となった医療と、当該医療を受けられる医療機関は国がホームページで公開する。その実績などについても、臨床研究病院から国へ年に1回以上の定期的な報告を求めた。
◎前例がある医療は申請から2週間で判断
一方で、前例がある医療を患者申出療養として実施する場合は、患者申出を受けた医療機関が前例を取り扱った臨床研究中核病院に申請を行う。臨床研究中核病院は、合併症の発現可能性、薬剤量調節の難易度などのリスクを踏まえて国が設定した実施可能な医療機関を参考に、個別に実施体制を審査、実施の可否を判断する。この場合は、かかりつけ医も患者申出の窓口機能を担うほか、医療の実施を行うことも可能とした。申請から実施の可否の判断までは、原則2週間。
新たな医療機関で実施が可能とされた場合は、協力医療機関として随時追加可能。厚労省から臨床研究中核病院へできるだけ施設を拡大することも求めた。なお、実施の可否判断後は、速やかに地方厚生局に届け出ることも求めている。